スマート農業実証プロジェクト 現地レポート
スマート農業加速化実証プロジェクト
福岡県|
麦|稲|大豆|
2020年11月11日、福岡県鞍手町の(株)遠藤農産様のほ場にて「ふくおか遠藤農産スマート農業実証コンソーシアム」現地見学会が開催されました。令和2年度のスマート農業実証プロジェクトに採択された同コンソーシアムでは「麦・大豆の品質向上と既存機械やシェアリングを活用した土地利用型大規模経営での実践型スマート農業技術体系の実証」が進行中。スマート農業技術の活用で、規模拡大を図る上で必須である省力化を実現し、10a当たりの労働時間を1割削減。自動操舵システムや自動運転農機の活用で適期に精密作業を実施し、米・麦・大豆の収量・品質を向上。そして、労働時間削減に加え、近隣の大規模農業者と普通型アグリロボコンバイン、ドローン等のシェアリングを実施し、10a当たりの経営費を2割削減すること等を目標として、2年間の実証に取り組んでいます。
実証初年度の2020年は、営農支援システムKSASの活用や、食味・収量コンバインによる小麦の収量・タンパク質含有率の把握、ドローンのオペレータ育成、自動操舵システムを活用した大豆播種作業等を実施。近隣の大規模農業者や関係自治体各位等の注目を集める中、アグリロボトラクタによる耕起作業と自動操舵システムを活用した播種作業の実演が行われました。
ふくおか遠藤農産スマート農業実証コンソーシアム 現地見学会
現地見学会では、①自動運転農機 アグリロボMR1000A(無人仕様)によるロータリ耕の実演②トプコン自動操舵システムを装着したトラクタによる播種作業のデモ実演が行われました。実証機械の紹介に続いて行われた実演では、アグリロボトラクタの無人作業が始まると、参加者は説明に耳を傾けつつ、熱心に動画や写真撮影も。実演終了後は、コンソーシアム関係者に質問する方や、メーカー担当者に実機の詳細を尋ねる方も多く、関心の高まりを感じるものとなりました。
スマート農機と営農・ほ場管理システムの活用で、
地域の課題を解決する体系の確立へ
今回の実証プロジェクトでは様々な最新の農機を使っていますが、ドローンやアグリロボトラクタ等、新しい事へ取り組むに際しては、関わる皆が、講習を受講するところからはじまっています。ほぼ横並びの状態でスタートし、学んだことをすぐに皆が実践で試していける。新しい体系の確立に向け、とてもよい環境をいただいています。
スマート農業は「頭」として営農・ほ場管理システムがあり、「手」としてトラクタ、田植機、コンバイン等のICT農機があるカタチだと理解しています。それぞれの農機が収集したデータを集約し、KSASを活用して次への対策を検討し、実践することができる。また、フィールドのデータが採れることによる再現性、同じラインに乗って作業ができるということも大きな魅力です。自動操舵システム利用時は、作業性の向上のみならず疲労度も全然変わってくるので、視野が広がり、作業の確認もしっかりできています。
今日実演したMR1000Aに関しては、今後は自動操舵システムで麦を播種するほ場の隣で無人運転で耕起作業をするような使い方が検討できれば、労働時間の軽減にもつながると思います。
2020年は天候に悩まされた部分も多々ありましたが、自動操舵での播種、食味・収量コンバインによる収穫、そしてMR1000Aの活用等を通して、2021年、まずは麦での成果に繋げたいと思っています。
米・麦・大豆栽培におけるスマート農機の一貫作業体系を確立し、
普及に繋げることで、担い手不足に対応したい
福岡県の土地利用型の農業は、高齢化や後継者不足で担い手が不足する状況の中、集落営農組織や大規模農業者への農地集積が進んでいます。鞍手町管内では、本プロジェクトの実証主体である遠藤農産様をはじめ、規模拡大が進行中ですが、大きな課題が省力化。土地利用型の主要3作物すべて、スマート農業の一貫体系での省力化を推進したく考えています。
本プロジェクトを通じて、スマート農業の導入効果について調査し、数値化して示すとともに、近隣大規模農業者や県内及び全国への成果発信を行っていきます。メーカー各位とも協力し、より使いやすく、制度の高い作業に向けた機械改良のためのデータ提供も考えています。
現地見学会では、農業者のスマート農業に対する意識の醸成を目的とし、アグリロボトラクタによる作業の実際をご覧いただいた他、自動操舵や精密管理に必要な電波の受信方式についての説明も実施。アグリロボトラクタMR1000Aによるロータリ耕は、1時間程度で作業完了できますし、こういう機械を中心に機械化体系を組めるのでは思います。
本プロジェクトを通じ、米・麦・大豆栽培におけるスマート農機を活用した一貫作業体系を確立し、普及に繋げることで担い手不足に対応できればと考えます。来年は労働時間の一番多い水稲で、田植えの省力化に向けたアグリロボ田植機による実証も始まります。麦・大豆については、見つかった課題に改良を加えて、体系の確立を目指していきます。
本プロジェクトで得られる成果を地域に広め、
農家の所得向上や雇用創出に繋げられるように取り組みます
鞍手町管内は、一筆のほ場自体が狭い、いわゆる「条件不利地」が多いという特徴があります。そうした中で本プロジェクトの実証主体である遠藤農産様は、レーザーレベラーを用いて合筆を進め、土地の集約化を行う等、地域農業のオピニオンリーダーとして先進的な農業に取り組んでおられます。
高齢化と後継者というのは、この地域にかぎらない全国的な農業の問題。農家の減少に歯止めをかけるためには機械化が重要です。地域にあった効率的な機械化一貫体系を確立するため、本プロジェクトで得られる成果を地域に広めて、農家の所得の向上や雇用の創出に繋げられればと考えています。
自動運転農機については、今日ご覧いただいたアグリロボトラクタや、実証でも使われているアグリロボコンバイン、アグリロボ田植機等、既に現場での活用も進んでいる状況です。こうした機会にトラクタの無人作業をご覧いただいくことで、皆さんの認識も実感を伴ったものへと変化していくと思います。
本プロジェクトでは機械面のサポートだけでなく、現場やお客様の声をしっかり聴くことで、機械化体系の確立はもとより、次世代の機械にも繋がるように活動していきたく思っております。