KSASは、パソコンやスマートフォンを利用し、圃場・作物・作業情報等を一元管理できる営農支援システムです。
農業機械に最先端技術とICTを融合させ、農業経営を「見える化」することで、農作業の効率を上げ、生産性の向上をサポートするとともに、作業時間や投入資材をデータ化することで、経営の改善に貢献しています。
(この記事は、平成30年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.36』を元に構成しています)
近年、KSASの導入目的で特筆すべきは、関心の高まりを見せるGAP※取得への活用です。GAPとは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全等の持続可能性を確保するための生産工程管理の取組みのことです。GAPの認証を取得することで、「安全な農場での安心な生産物」という品質・信頼を得ることができ、販路拡大へつなげることが可能です。また、2020年東京オリンピック・パラリンピック選手村への食材調達基準として、農水省のガイドラインを満たしたGAPの認証を取得することが推奨されています。
KSASは、日本GAP協会より推奨システム(青果物2016対応)として認定されていますが、ASIAGAP(旧JGAPAdvance)やJGAPだけでなく、各種GAP(GGAPや地域GAPなど)の取得にも役立ちます。KSASはGAP取得への近道だと評価が高まっています。
※Good Agricultural Practice:農業生産工程管理
東京オリンピック・パラリンピックに食材を提供したい
香川県観音寺市で、レタスを中心に、スイートコーン、青ねぎ、たまねぎ、にんにく、ブロッコリーなど多品目の野菜栽培を行う大平やさい。「人材の育成、農業の創造、安全安心満足をお客様にお届けすることを目的とし、利潤をつねに探求し続け、豊かな社会の実現に貢献しよう」を企業理念に2014年に設立されました。大平やさいでは、2017年4月からASIAGAP取得を目指した取組みを始め、5ヶ月後の9月に取得。様々な情報の管理・共有・提出資料作成などにKSASを活用されました。
GAP取得を目指した理由について、大平社長は、「日本でのオリンピック・パラリンピックに、自分のところで作った食材を出したいという思いからです。それによって従業員のモチベーションも変わってきます。それと『農業の見える化』を図ることで、従業員にとって働きやすい環境を作りたいと思ったのです。今までは個人農家の延長でここまで来てしまったので、ルールも無く精神論で仕事をする感じでした。GAPを知っていく中で考えが変わっていきました」と話します。
GAP適合基準をクリアするための帳票がKSASにある!
「GAPの認証取得は大変です。資料作成に手を取られて圃場に出られない日もあります。そこで長くても半年以内に取るということを目標にしました。このスケジュールの中でKSASはとても役立ちました。適合基準をクリアするための帳票がそこに用意されていたのですから」と大平社長。
GAP取得に活用したKSASの機能は、「圃場情報」「作業日誌」「作付計画」「機械リスト」です。これをすべてエクセルで作成するとなると、かなりの時間と労力を要します。例えば「作付計画」の場合、「作付計画」と圃場が紐付けされているため、出力して使用でき、圃場毎の作業記録を作る手間が大幅に削減できました。
また、「作業日誌」からは、従業員がどのような作業をしたかを確認でき、作業の進捗管理が把握できるようになったと言われます。
GAP取得過程でスタッフにも意識変革が起こる
また、大平社長は、「薬剤の使用回数を紙で記録すると圃場単位なのでものすごい量になります。できるだけデータで管理したいと考えていました。今はKSASでデータを残しています。紙ベースで管理することになっていたら、本当に大変だったと思います」と言います。大平社長が、KSASの機能の中で、特に気に入っているものは「農薬の検索機能」だそうです。「新しい薬剤がほとんど登録されていますので、農薬の基準書、作業指示書の作成時に活用しています。1回1回インターネットで調べたり、防除の本で探す手間が省けてありがたいですね」と喜びます。
大平やさいでは、GAPに取り組む以前は、道具などが使ったら使いっぱなしで、けっこう散乱していたそうです。大平社長は、「GAPを取得する過程で、整理整頓の習慣ができ、従業員が主体的に各々の責任を果たすようになりました。GAP取得が、企業理念のひとつである人材育成にもつながっていきました。今後は、マーケティングに力を注ぎ、常にお客様の視点に立った品質向上と地域社会に貢献することを目指していきたいと思います」と抱負を語ります。香川産の安全で美味しい野菜を全国の消費者に届けたい!そんな大平やさいの挑戦はまだ始まったばかりです。