栃木県育成新品種「とちぎの星」で、鉄コーティング湛水直播栽培と慣行移植栽培を比較した実証事例をご紹介します。作業時間の減少と、軽労化と育苗コスト低減による純利益の増加が得られました。
調査のねらい
土地利用型経営体の規模拡大や飼料用米の作付けに伴い、育苗に係る労力が大きな負担となっている。「あさひの夢」による直播栽培は倒伏の心配も少ないため、安定した収量が得られるが、普及させる県育成新品種「とちぎの星」による直播栽培では知見がなく、今後の普及拡大を図るため、安定栽培技術の確立が課題となっている。
結果の概要および考察
1.苗立ち数105.6本/㎡、苗立ち率95%と極めて良かった。5/14の播種後、5/16には50%の出芽揃いとなり、7日後の5/21には90%以上出芽したため、十分な苗立ち数を確保できた。6/26調査では茎数が30.1本/株と多く、草丈も52.4cmで長かった。出穂期までは順調に生育したが、9月上旬の降雨や台風18号の影響で成熟期の倒伏程度は4.2となり、収量は583kg/10aで慣行対比92.5%となった。
2.雑草防除は播種同時処理のオサキニ1キロ粒剤、ラクダープロLフロアブル、クリンチャーバスME液剤の3剤体系で、雑草発生程度は微であった。
3.慣行同規模面積3,100aの場合、原材料費は慣行の体系と比較して10aあたり種苗費で125円、農薬費で4,409円多くなるが、育苗に係るコストが削減され、肥料費及びその他資材費で3,974円低下する。また、全体の作業時間が減少し、労務費で1,816円削減される。生産費では減価償却費が359円減少するため、実証区の所得は10aあたり116円、家族労働費を含めた純利益は456円増加する。
今後の課題・展望
1.高収量、高品質を確保するため、倒伏させないことが重要であり、品種にあった直播専用肥料を開発する必要がある。また、有効分げつ期の水管理で生育をコントロールできるよう検証を進める。
2.省力・低コスト化のためには薬剤費用の低減を図る必要があるが、近年の猛暑の影響により、害虫防除の回数は増える傾向にある。当該地域は麦作地帯であり、縞葉枯病を媒介するヒメトビウンカを始めとしてニカメイチュウ、イネツトムシ等の害虫が多く発生することから、播種同時処理が可能な殺虫剤の開発が期待される。さらに、農薬費の大部分を除草剤が占めるため、効率的・効果的な雑草防除体系を組む必要がある。
3.初期の苗立ち確保にはレーザーレベラーによるほ場の均平化が有効であるが、レベラーの導入により減価償却費は増加し、収益性が減少するため、将来的に整地作業を担う受託組織の育成やレンタル等の仕組みを構築する必要がある。
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