えだまめ栽培で最も労力がかかる収穫・調製作業を省力化する「えだまめコンバイン(EDC-1100)」によるえだまめの収穫作業が、2022年9月1日に秋田県農業試験場で行われました。秋田県では、えだまめ出荷量日本一を目指して、消費者や実需者から選ばれる産地づくりに取り組んでおり、えだまめコンバインの作業性と歩留まりの向上に期待を寄せ、令和4年度全国農業システム化研究会において、「新型えだまめコンバインの現地導入に向けた作業性調査」をテーマに、実証調査を行っています。
また、本製品は2022年度の農業食料工学に関する技術の進歩に貢献したと認められる製品・技術に授与される農業食科工学会「開発賞」を受賞するなど、生産者や関係機関の関心を集めています。
システム化研究会実証担当者の声
生産者と秋田農試そしてクボタ
一緒になって築き上げた高効率な収穫作業を実現するえだまめコンバイン
えだまめコンバインは秋田農業試験場とクボタが協力して開発した製品です
えだまめコンバイン(EDC-1100)は以前より秋田農試とクボタが協力して研究を重ね、市販化に至った機械です。秋田県では開発したえだまめコンバインをより効率的に活用してもらうため、品種や作期が機械性能にどのように作用するか等を細かく調査、把握することを目的に、全国農業システム化研究会で実証調査を行っています。
異なる品種や時期を調査して機械に合わせた栽培方法を検証しています
えだまめは全国各地で栽培方法や品種が違います。えだまめコンバインでの収穫時の最下着莢位置は100mm以上を想定していますが、栽培方法や品種によっては100mmより着莢位置が低い場合があります。令和3年度の秋田県でのシステム化研究会の実証調査では、最下着莢位置が6〜36mmと想定より低い条件下で収穫を行った場合、デバイダを土中に潜らせ、引抜ベルトをできるだけ下げることで、損傷莢発生をある程度まで軽減できることがわかりました。
今年の実証では、改めて品種や栽培方法の違いによる本機の作用について検証を行うことにしています。具体的には①「ゆかた娘」、②「あきたほのか」、③「リュウホウ」(ダイズ品種)の3品種において下から15cmごとに印をつけて、収穫時の引抜きベルトやフィードチェーンによる損傷の確認を行い、品種や栽培時期による収穫精度の違いを調査しています。
忙しい時期、雨でも収穫作業は可能です
今日の収穫作業はあいにくの雨でしたが、えだまめは青果物で収穫適期を逃すと出荷できなくなる場合があるため、雨でも収穫をしないといけません。雨の中でもきちんと収穫できることを実証するため、悪天候の中あえて収穫を行いました。
雨で濡れていることにより水分を含んでいる葉等が排出されない事を不安視していましたが、トウミの性能は低下せず一定程度の選別がされていました。引抜きがうまくいけば、脱莢はうまくいくことが確認できました。
えだまめコンバインは今、黎明期。生産者の皆様と一緒に進化を重ねていきたい
えだまめコンバインは、昔の水稲の自脱型コンバインが出始めた当初のような、いわば黎明期です。水稲のコンバインも最初の頃は稲の品種に合わせて機械も変化しましたし、機械に合わせて稲の品種も変わっていきました。えだまめコンバインも生産者の皆様に使ってもらうことで、機械と栽培面の両方が進化を重ねて広く普及していくのではと考えています。
システム化研究会実証担当者の声
秋田県のえだまめ出荷量日本一をめざして
えだまめコンバインは、栽培面積拡大のキーポイントになります
秋田県の重点品目としてえだまめの栽培面積拡大を推進しています
秋田県では、えだまめの出荷量日本一(京浜地区の中央卸売市場〘東京、横浜、川崎〙に対するえだまめの都道府県別出荷量)を目指しています。県では「メガ団地等大規模園芸拠点育成事業」の重点品目のひとつにえだまめを挙げて、施設や機械の導入等の支援を行っています。また収量をきっちりと確保できるよう、普及指導員が技術面でもサポートを行うことで、ソフト・ハードの両面から支援を行い栽培面積の拡大を目指しています。
大規模農家が土地利用型作物としてえだまめを選択しています
秋田県は稲作農家が多く、その中で近年、えだまめ栽培に取り組みたいという大規模経営体が増えてきています。背景には、米価の低迷や土地利用型作物の導入を考えた時、えだまめを選択する生産者が多いこと等があります。
えだまめは収穫適期が短い作物のため、栽培面積が大きくなるにつれて、適期に収穫ができず、品質が低下する場合があります。えだまめの規模拡大には、適期収穫を逃さず、迅速に収穫作業が行えるかが課題となっており、秋田県では全国農業システム化研究会において、効率的に収穫が行える「えだまめコンバイン」活用の実証を重ねています。
えだまめコンバインに合わせた栽培体系の確立を目指します
えだまめは極早生から晩生まで幅広い作型があり、草姿が違います。これに対し、機械は、構造を柔軟に変えることが難しいので、収穫の精度が違ってきます。これまでの結果から、機械に合わせた草姿を目指して栽培を行うことで、えだまめコンバインの性能を最大限に発揮できることを確認できました。
秋田県は高齢化による労働力不足が大きな課題です。収益を上げていくためには、効率化できる機械が必要です。日本一を目指す上で、この「えだまめコンバイン」が大きい転機となる機械と期待しています。
クボタ技術顧問の解説
えだまめコンバインを使用した令和4年度の秋田県による実証調査について
秋田県農業試験場において、昨年、令和3年度全国農業システム化研究会実証調査で、えだまめコンバインの作業性調査をテーマに有意義な成果を取りまとめていただき、感謝しています。主な成果は、①最下着莢位置が低い場合、デバイダをある程度土中に潜らせる(3〜4㎝、引抜ベルトが地面に触れない程度)ことで下位の莢の損傷が軽減、②分枝折損率が大きい品種の場合、収穫ロス(落下)が増加、③タンク仕様の搬出はコンテナ2個が効率的、また収穫は回り作業が効果的、などです。
継続2年目の令和4年度に使用しているえだまめコンバインは、試験場で実際に購入していただいた、EDC1100-C(コンテナデッキ仕様)です。本機のPRポイントですが、収穫ロスを減らすためフィードチェーンのテンションや脱莢ブレード間隔及びトウミの風量の調整が可能、搬送ベルトに桟を付けえだまめをスムーズに搬送、土塊付着軽減のため引抜下部の根の通過スペースを十分に確保、土落としブレードの採用等、より高精度に収穫できるようになっています。
今年の実証調査は、収穫ロスに係る調査、具体的には着莢位置と損傷率の関係、もぎ残しと分枝折損等との関係のデータが得られるとのことですので、大いにその成果に期待したいと思います。