ソリューションレポート
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令和3年度全国農業システム化研究会の現地実証調査として、福岡農林事務所北筑前普及指導センターが取り組んでいる「麦わらすき込みほ場における高速機械化体系の実証」の一環として、11月18日、福岡県福津市にあるアソウファーム様の実証ほ場において、大豆の収穫作業が行われました。
GSトラクタ+高速汎用播種機で
大豆栽培の省力・低コスト・安定生産を目指す
アグリロボコンバインWRH1200A2で試験区を収穫
7月に実施された播種作業の調査で、10a当たりの作業時間は、高速汎用播種機を使用した実証区が、慣行区を大幅に短縮できることが実証され、高速機械化体系による収量・品質結果に期待が寄せられていました。今回の収穫作業は、地域農業へのスマート農機の普及を見据えて、クボタアグリサービス㈱福岡事務所が実演機としてアグリロボコンバインWRH1200A2を用意。実証農場であるアソウファーム様や近隣農家の方々が関心を持って見学する中で実施されました。
収穫後、そのWRH1200A2で測定した生重量を、10a当たりに換算した結果、収量は、高速汎用播種機体系の実証区1では慣行区より約20kg、狭畔播種機体系の実証区2では約40kg上回る単収となりました。今回は、収穫結果と実証に関わった皆様の声をレポートします。
実証担当者の声
高速機械化体系は、省力化、規模拡大に対応した技術になると思います
作業時間を約7割削減した高速汎用播種機による播種体系
今回の実証調査は、実証農家の方が行っておられる部分浅耕程播種を慣行区とし、対照としまして、実証区1は、高速汎用播種機を用いてGSトラクタで播種するという方法、実証区2は、GSトラクタは同様で、狭畦播種機を用いて播種する方法となっています。
7月に実施した調査では、播種作業における10a当たりの作業時間は、慣行区の25分24秒に対して、実証区1では7分27秒、実証区2では14分2秒と、実証区1では、かなり高速化が図れたという結果でした。実証区2は播種機の幅が狭く、旋回の回数が多かったことから、慣行区とあまり差がなくなってしまいました。GSトラクタは直進の速度は速いのですが、マーカーの上げ下げの関係で、旋回時に時間を要したことが要因だと考えています。
必要な出芽率を確保するが、クラスト発生に課題を残す
出芽率については、慣行区、実証区とも必要な出芽率を確保しました。中でも実証区2の狭畦密植栽培は、条数が多く、播種機が沈まず、播種深さが浅かったことから、出芽率がよかったですね。
また、今回は、播種後の雨の影響で、土壌表面にクラストが発生し、クラスト割りしたところでは十分に出芽しましたが、しなかったところでは出芽不良になりムラになってしまいました。今後、この点についても対策を検討したいと思います。夏場から収穫期までの天候については、8月に長雨が続いて湿害が生じたり、逆に9月、10月はほとんど雨が降らず、乾燥害で実の肥大が抑制されて大豆にとって厳しい状況でした。
予想以上の収量差を示した高速機械化体系
本日、収獲作業を行った結果、収量については、コンバインの測定による生重量の測定値を、10a当たりに換算した数値では、慣行区が137kg、実証区1が159ka、実証区2が178kgと、実証区は、慣行区に比べて、どちらも単収が上回っていました。意外に差があったなと感じています。これから実証結果を考察していくことになりますが、自動運転農機などの価格が下がって導入しやすくなれば、かなり省力化なり規模拡大に対応した技術になると思います。今回の実証結果をまとめて、大豆の省力・低コスト、安定生産を目指した技術として、担い手の方々に提案や技術支援を行いながら、普及につなげていこうと思っています。
■試験区の実証結果
実証経営者の声
地域農業を守るために、新たな技術導入やスマート農機は不可欠です
気象変動に対応して、新たな作業体系も検討する価値はあります
最近、気象変動が激しく、適期播種が難しくなってきています。気象条件を読んで、播種する時期を的確に判断しながら作業を行っていますが、なかなか読んでも読み切れない状況です。今回、実証を行っている高速汎用播種機の体系については、私たちの作業と比べて、倍近くの速度で播種が可能で、短期間に広い面積を播種できます。機械にかかるコストも考えて、そこをクリアできれば検討する価値はあると思っています。それと狭畦栽培については、中耕培土を省略できる点は大きなメリットです。私たちも、サイドリッチャでうね立てをすることで、中耕培土を省くなど、作業の省力化を図っています。今、新規登録された除草剤等も出ていますので、そのようなものを取り入れながら、新しい作業体系にも挑戦していけたらと思います。
高齢化が進む地域農業に、今後必要となるスマート農機
今日は、アグリロボコンバインWRH1200A2での収穫作業の実演を見せていただきましたが、いずれ担う人が少なくなって、面積が増えるようなことになれば、自動運転を活用することで、オペレータが楽になり、作業の効率化が図れて、無理のない収穫作業が可能になると思います。今は、面積に対して大きすぎるコンバインですが、いずれは導入するようなことになるかもしれません。この地域では、以前は、担い手が10名程いましたが、現在、5名に減り、しかも年齢が70歳を超える高齢です。離農する方が出れば、その農地をいずれは担わないといけません。地域の環境整備とかも考えて、地域を守るというんですかね、当然、モノを作って収穫するという大前提ではありますけど、地域農業を持続できるような形で取り組む農業が求められてくると思っています。
クボタからのご提案
直進キープ&らく直キープ機能で、大豆収穫をスマート化
アグリロボコンバインWRH1200A2
オペレータの負担が軽減される直進キープ&らく直キープ機能
大豆の場合は、稲や麦と比べると、株ごとに生育状況が違い、大きさや倒伏の状態も異なるため、通常の収穫時には、真っすぐ走りつつ、株の状況に合わせて、刈取り高さや速度を変えなければなりません。アグリロボロボコンバインWRH1200A2は、直進キープ&らく直キープ機能によって、直進時はレバー操作から解放されるので、刈取り高さや速度などの制御により集中できることで、オペレータの負担が軽減されます。(旋回は手動で行います)
KSAS連動で作業・収量等の記録が残る
WR1200A2は、収量センサと食味・水分センサを装備しており、大豆では、収量と水分含量をほ場単位で測定できます。またKSASと連動していますので、いつ・どのほ場で・何分かけて作業をしたかなど、自動で日誌を作成することができ、それらの作業や収量等のデータに基づき、翌年度の改善計画を立てることに役立ちます。