鹿児島県|
稲|さつまいも|
水稲―水稲―転作(野菜など)の水稲3年2作のブロックローテーションを行う鹿児島県曽於市大隅町笠木地区での、パワクロトラクタを利用して耕盤破砕(心土破砕)から修復までの作業技術実証事例をご紹介します。
調査の狙い
田畑輪換による水田の高度利用で所得向上を目指す水田輪作地域では,畑作物,露地野菜の高品質・安定生産のための耕盤破砕(排水対策等)が有効な手段であるが,水田復田時の耕盤層再形成技術が未確立であることから,田植機の作業性や漏水等に問題が残されている。
そこで,半装軌式トラクタの耕盤修復性能について,ブロックローテーションを行う大区画ほ場整備地区で実証し,水田輪作体系への適応性を検討する。
今回は、単年度で耕盤破砕→耕盤修復→水稲作をを実証し、耕盤破砕後にサツマイモを作付け後、即耕盤修復し水稲栽培を行った。
結果の概要および考察
1.サツマイモ収量
上いも収量は耕盤破砕区が347kg/a,対照区が326kg/aで耕盤破砕区が多収であった。茎葉重は耕盤破砕区が149kg/a,対照区が190kg/aで対照区の茎葉は過繁茂の傾向があった(表1)。1個重は耕盤破砕区が247g,対照区が184gであり,細根重は耕盤破砕区が1.4g/株,対照区が2.6g/株であった。耕盤破砕区は畦内が過湿にならず,細根数が少なかったと考えた。また,1個重が重く加工用に適したサツマイモが生産できた。
2.水稲生育,収量
中干期の生育は耕盤破砕区が草丈64.4cm,茎数26.8本,SPAD値36.0,対照区が草丈61.9cm,茎数27.2本,SPAD値36.2で同程度であった。登熟期の生育は耕盤破砕区が草丈98.4cm,穂数24.8本,全籾重46.3g,対照区が草丈100.5cm,穂数23.8本,全籾重45.5gで同程度であった。
収量は耕盤破砕区が全籾量85.7kg/a,精籾量83.8kg/a,精玄米重69.9kg/aに対し,対照区は全籾量84.3kg/a,精籾量80.0kg/a,精玄米重66.8kg/aであった(表2)。対照区はしいながやや多く,精玄米収量は耕盤破砕区がやや多かった。
3.耕盤修復状況
耕盤修復はレーザーレベラによる均平,ロータリによる均平耕うん,カルチパッカローラによる5回鎮圧,半装軌式トラクタと水田ハロによる代かきで行った。
耕盤破砕区はカルチパッカローラによる鎮圧を行っているため,対照区より土壌の練り込みが悪く,代かき作業時間を要し,作業時間が1.1h/10a,燃料消費量が5.9L/10a増加した。労賃単価を730円,燃料単価を125円とした場合,1,541円/10aの費用増加であった(表3)。
耕盤破砕区の中干し期間中の土壌含水比は対照区より少なく推移し,1~2日程度乾燥度合いが進んだ(表4)。また,中干し期間前半は対照区は足が埋没し歩行が困難であったが,耕盤破砕区は容易に歩行可能であった。耕盤破砕によって中干しの効果が高まったと考えた。
今後の課題・展望
1.半装軌式トラクタを利用して耕盤修復を行うことで,安定した耕盤が再生され,用水が十分であれば耕盤を破砕しなかった場合と同様の田植え作業,水稲生育が可能である。
2.耕盤修復後も排水性が高く,中干し期や収穫期に降雨があっても,確実な中干しや収穫時の良好な作業性が期待できる。
3.耕盤修復の程度は土壌条件,ほ場条件により異なるため,耕盤破砕を行う場合は,事前に土層調査等を行う必要がある。
もっと詳しく!今回ご紹介した記事の全文はこちら→http://www.jeinou.com/2014/01/post_14.html
(みんなの農業広場の該当記事へリンクします)