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低コスト農業×6次産業化

宮城県|

稲|

輸出に対応できる『超低コスト米』生産体制の実証

輸出に対応できる『超低コスト米』生産体制の実証

「スマート農業実証プロジェクト」で導入されたクボタ田植機ナビウェル(NW8S) 。GPSを活用した直進キープ機能によって直進時のハンドル操作が不要でオペレータの負担を軽減。後ろを振り返って苗や肥料の状況を確認する余裕もできる。
(この記事は、2019年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.37』を元に構成しています)

 


 

 有限会社アグリードなるせは、「農地を守り、地域と共に発展する経営体を目指す」ことを経営理念に、前身である中下農業生産組合から、平成18年2月に設立された農業生産法人です。法人化から5年後の平成23年3月11日、東日本大震災津波で、東松島市の野蒜(のびる)地域は大きく被災し、法人の農地・施設も壊滅的な被害を受けました。しかし、その年の4月から関係機関等の支援のもと、除塩に取り組み、すぐに田植えを再開。地域の主要産業である農業と雇用を守る取組みは、復興の希望の光となりました。被災後、離農する農家が多く、その農地をアグリードなるせが引き受けて集積。現在は、1haの大区画に整備され水田の集約化を図り、水稲、麦、大豆等の2年3作、3年4作体系で、のべ118haの水田の利用率向上に取り組んでいます。

加工施設「NOBICO」を核に、6次化で地域に元氣を

 地域農業の受け皿として雇用の安定化を図るため、新たな事業として、自社栽培小麦の製粉や菓子(バウムクーヘン)の製造・販売に取り組み、平成27年には、国の補助事業を活用して、念願だった農産物処理加工施設「NOBICO(ノビコ)」が完成。販売戦略を練りながら、6次産業化による経営発展を目指しています。
 

 その中で、増え続ける農地の管理、整備水田の肥沃度のムラ、作業ピーク時の人手不足など、さまざまな課題に直面しています。
 代表を務める安部社長は、「今、私たちが抱えている営農課題は、いかに良いものを多く取るかということです。良い品質の農産物を多く収穫することは、なかなかそう上手くはいきません。そのバランスが難しい。震災後は、特に麦の生産に力を入れていますが、2年3作ですから、毎年変わった圃場で作物をつくっていると、土質管理が非常に難しくなってきています。どうしても地区や圃場ごとに収量や品質にバラツキが出ます。これからは圃場管理システムを活用して、作業管理や栽培履歴等を記録し管理していくことで改善していきたい」と語ります。同法人では、平成29年からクボタ営農支援システムKSAS を導入。約640筆の圃場をKSASに登録し、平成30年1月から本格稼働させています。
 

宮城県と連携して、超低コスト輪作農業に

 宮城県では、農業者の高齢化や労働力不足に対応し、さらなる規模拡大に伴う生産効率の向上や、品質の向上を図る切り札として、スマート農業に期待を寄せています。今回、国が公募したスマート農業実証プロにおいて、宮城県が代表となって、各企業とともにコンソーシアム(共同体)を形成して、2年間の実証に取り組むこととなりました。
 

 輸出にも対応できるような『超低コスト米』の生産体制の確立を目指し、左図のような計画内容で2年間の実証が行われます。
 スマート農業について安部社長は、「導入効果として考えられるのは、情報を皆で共有できるということ。これは大きいですね。経営規模が拡大すれば、必ずコミュニケーションが重要になってきます。あとはオペレータの負担軽減です。作業面積が増えても、精神的な面で和らげられるのかなと思います」。実証のテーマであるコスト削減については、「将来の生産の拡大、輸出も視野に入れるとなれば、乾田直播を拡大していく方向になると思います。ただ、現況の中では、2年3作体系で麦を作付けしていますから、転作率で45%を超えているわけです。そこにまた輸出米となると、ウエイトが大きくなるので、その辺の選択はきちっと今後検討した上で、取り組もうと考えています。今は、スマート農業の実証を通じて生産費がどの程度削減できるかを見極めること、そして『60㎏当たり7000円』の米づくりを目標として動いています」と語ります。
 

従来の作業体系を大きく変えることができる。それがスマート農業

 また、佐々木常務は、「うちのスタッフは平均年齢が37歳です。農業に関わって長くても5年のスタッフなのです。農機の使い方もまだ熟知していませんから、スマート農機によって経験の浅いスタッフの技術を補ってもらえるのかなと思います」。また、作業の効率化について「直進キープ機能付き田植機なら、繁忙期に作業が重複した際、例えば田植作業の班は、通常6人のところを3人で進めるよう指示を出して、違う作業に3人 を配置するということも間違いなくできます。従来の作業体系を大きく変えることができる。それがスマート農業だと思います」と話します。

スマート農業で、若者が憧れる農業を創っていきたい

 平成27年5月にJR仙石線が再開し、仙石東北ラインが新たに開通しました。日本三大渓の嵯峨渓を誇る奥松島に野蒜駅から行くこともできます。アグリードなるせは、農業生産と製品を通じて地域の活性化を図り、他業種とコラボレーションすることで、『のびる村』として新たな時代のコミュニティーを創ろうとしています。「スマート農業は、次世代に安心して農業を繋いでいけるシステムだと思います。今の時代に合わせた、若者が憧れる農業を創っていきたいですね」と安部社長。スマート農業を確立させることが、次の世代への橋渡しだと考えています。新たな農業への挑戦が、新しい地域を創造するに違いありません。
 

▶クボタ田植機ナビウェル 製品情報はこちら
https://agriculture.kubota.co.jp/product/taueki/naviwel/
▶クボタ田植機ナビウェル YouTube動画集はこちら
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZz2I7oJRhyl3el5K0NNM9DakIBxAO7xJ
▶お問い合わせはお近くのクボタのお店まで
https://jp.locator.kubota.com/#Japan

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