クボタソリューションレポート
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2022年5月23日、秋田県大仙市において、湛水直播栽培の新技術として注目されている水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種栽培(以下「かん湛!」)の現地検討会が、農研機構東北農業研究センターと大仙市の共催で行われました。
GSトラクタとの相性が抜群!
無コーティング種子の代かき同時播種
スマート農業技術と「かん湛!」を組み合わせた実証
農研機構東北農業研究センターと大仙市は共同して、春作業の省力化を目的に、水稲の直播栽培面積の拡大を図るため、従来の直播栽培よりさらに省力・低コスト化が期待できる「かん湛!」の導入を推進する取組を進めています。今年は、直進アシスト機能付トラクタ(GSトラクタ)や水管理の自動化などのスマート農機技術と「かん湛!」を組み合わせた実証を行っています。
検討会では、技術の特徴や播種機の説明の後、クボタアグリサ-ビス担当者が、実証に使用するクボタの直進アシスト(GS)機能付トラクタ(以下GSトラクタ)を紹介。引き続き、代かき同時播種作業の実演を行いました。会場には、地域の生産者の方や関係機関を合わせて30人を超える多くの参加者が集まり、GSトラクタによってきれいで効率的な「かん湛!」の播種作業ができることを実感していました。
種子コーティングは不要!
トラクタで仕上げ代かきと同時に播種する「かん湛!」の特徴
「かん湛!」は、農研機構東北農業研究センターが開発した新技術で、トラクタで仕上げ代かきをしながら根出し種子または催芽種子を播種する湛水直播栽培法です。種子コーティングが不要なため、種子準備が簡単で、浅い土中に播種できるため、出芽が早く揃います。トラクタに代かきハローと専用播種機を装着して、代かきと播種を同時に作業、しかも一人で作業ができるので、とても効率的です。さらに、GSトラクタを用いれば、作業の能率と精度が格段に向上します。労働力不足や作業ピーク時の多忙といった課題の解決につながる技術と期待され、各地で実証や普及が始まっています。
生産者の声
将来的に、作付面積の3分の1を「かん湛!」で行えれば
かなりラクになります!
友人から、無コーティングの種モミを使って、代かきと同時にトラクタで直播ができる「かん湛!」という技術があると聞いて、今年この実証に取り組みました。田植機が入れないほど軟らかいほ場があるので、トラクタで播種できるのは大変ありがたいです。この技術を使えば、育苗にかかる労力やコストの低減にもつながるので期待しています。将来的に、作付面積の3分の1ぐらいを「かん湛!」でできれば、すごくラクになりますね。収量については、移植の場合とほとんど変わらないと聞いていますが、たとえ1俵減ったとしても、春作業の省力化と資材費の削減で十分賄えると考えています。今日この実演会を見て、GSトラクタはいいなと思いました。通常、作業する時には後ろを見る余裕がないのですが、直進アシスト機能があると後ろを見ながら作業できるので大変便利ですね。
生産者の声
春作業の労力とコストを大幅に削減できる魅力的な技術ですね!
4月から5月の2か月間は1年で一番忙しい時期です。育苗は、土入れ、種播き、ハウス管理という大変手間のかかる凝縮した時間ですが、この技術を使えば、その工程が割愛できますね。種モミだけ準備すればいいので、労力もコストも大幅に削減できると思います。直進アシスト機能のついたGSトラクタで播種できるのなら、父の農業を夫と二人で担っていくことを考えた時に、安心できると感じます。GSトラクタを女性の私が運転して、夫に丘仕事を頑張ってもらうこともできるかも知れませんね!
実証担当者に聞く
これまで実証結果では移植並みの収量を確保
「かん湛!」とGSトラクタはとても良い組み合わせだと思います
表層浅く土中播種できるので、種子コーティングが不要
「かん湛!」の最大の特徴は、無コーティングの根出し種子または催芽種子を、トラクタで仕上げ代かきと同時に播種するという点です。代かきハローの後ろに種子を落とし、鎮圧ローラを使って覆土することで土中にごく浅く播種できます。種子コーティングをしなくても鳥害に遭わず、しかも、埋没して出芽不良になることもありません。「かん湛!」を行う上で大切なことは、ほ場選びです。直播栽培全般に言えることですが、水の自由が利くほ場、水持ちのいいほ場が、稲の出芽の面からも雑草防除の面からも非常に大事な条件ですので、ほ場選びは重要です。品種は、最初は直播栽培に適した品種で、丈が短めで倒伏に強く、なおかつ多収の品種、いもち病に強い品種を選んでいただきたいと思います。
播種後の水管理は落水管理が基本
播種後の注意点は、入水と除草剤散布のタイミングです。播種後、落水管理をして出芽を促すのが基本です。播種後すぐに水を入れてしまうと、土壌の表層とはいえ酸欠になって芽が出てこないことがありますので、落水をして出芽が揃ってから水を入れ、そのあとに1回目の除草剤を散布します。ただし、スズメやカラスが多いほ場や雑草が多いほ場に関しては、播種後すぐに入水し、1回目の除草剤散布をすることをおすすめしています。
2021年実証で、移植並みの収量を確保
昨年の実証結果では、苗立ち率は、50%弱とちょっと少なかったのですが、苗立ち本数は1m2あたり150本ぐらいで十分な量を確保しました。品種が「ゆみあずさ」という直播向きの多収品種ですが、10a当たり718㎏と移植並みの収量を上げました。栽培面積も今年は230ha程度まで増えています。経営の面積規模は小さくても大きくても対応できる技術ですので、省力化を図りたい生産者の方たちに普及を図って、来年はできれば500haくらいまで拡大していけたらと思っています。
「かん湛!」はGSトラクタとの相性が最高だと思います!
仕上げ代かき同時作業なので、田面の土が柔らかで播種が乱れる可能性のある播種方法ですので、通常のトラクタですと、ハンドル操作しながら、播種状況を確認し、ハローの高さや播種の速度を変えたり、調整をしなくてはなりません。同時作業というのは作業の工程数は減らせますが、その分、1個の作業が複雑になります。そこで、トラクタの直進走行を自動で任せられると、播種の方に集中できてすごく精度が上がると感じています。特に条播する際に、直進がずれて株が重なる部分ができてしまったり、条間が開き過ぎたりすることもあるので収量にも影響します。GSトラクタならそういう失敗もなく、安心感もあってすごくいい組み合わせだと感じています。
実証担当者に聞く
育苗作業の省力化とコスト削減が図れる「かん湛!」を
積極的に推進しています
大仙市は、市町村単位での水田面積が全国2位であり、高齢化やほ場整備の進展とともに、一戸あたりの水田の受託面積が年々増加しています。そのため、規模拡大を進める農家では、春作業時の育苗管理に一層の人手とコストがかかる現状にあります。育苗作業の省力化とコスト削減が図れる「かん湛!」は、大仙市の状況にマッチしており、推進の必要性を感じ、2017年から積極的に実演会を開催しています。
メーカーに聞く
初期投資を抑えられる新技術を農家様に提案しています
「かん湛!」に使用する代かき同時播種機は、農家様がお持ちのトラクタに装着できるので、初期投資を抑えられることが大きなメリットです。仕上げ代かきの作業と同時に播種をすることで、作業にかかる労力を大幅に軽減でき、播種機に標準装備されている車速連動装置により、安定した播種を行うことが可能です。