クボタ ソリューションレポート #6
佐賀県|
稲|
平成29年度全国農業システム化研究会現地実証調査
水稲移植における苗箱削減と田植え同時処理技術の実証佐賀県
杵島農業改良普及センター
【 耳より情報 】
❶ 安価な密播キット購入で、手持ちの田植機を使って密播苗移植が可能❷ ツインこまきによる防除剤散布で、スクミリンゴガイの食害を回避
❸ 1台6役、移植・施肥・枕地ならし・除草剤・殺菌殺虫剤・スクミリンゴガイ防除剤等の同時作業が可能
❹ 直進キープ付田植機で、労力軽減・作業効率アップ
米政策の転換や米価の低迷が続く中、水田農業の担い手は高齢化が進み、省力化と低コストが求められています。そこで、佐賀県杵島農業改良普及センターでは、密播苗を用いた移植栽培の苗箱数削減に加え、殺菌殺虫剤、除草剤、スクミリンゴガイ除草剤の田植え同時処理による省力化とコスト削減効果を実証し、経営の発展効果を検討します。
6月9日、佐賀県白石町で、平成29年度の全国農業システム化研究会の現地実証調査の一環として、密播苗移植栽培の移植作業が行われました。
実証区の密播苗は播種量325g(湿籾)/箱で育苗期間が14日、対照区は稚苗で120~130g、22日の育苗期間の苗をそれぞれ移植。また、隣接する別圃場で農家慣行区(230g・育苗期間22日)も併せて実証します。
今回の実証は、密播苗を欠株なく移植できるように、横送り回数やかき取り量を調整し、密播キットを取り付けたGS田植機EP8Dを使用しました。また、「ツインこまき」を装着し、除草剤とスクミリンゴガイ防除剤を移植と同時に散布することで、若苗がスクミリンゴガイの食害を受けないように対策が加えられています。
苗箱削減の目的は、女性のための労力軽減です
苗箱の削減には、面積が拡大し始めた10年くらい前に、疎植から取り組みました。いちばんの目的は省力化。苗運びをしてくれる女性のための労力軽減です。私は田植機の運転をしていますが、苗運びをしてくれる女性は大変ですから。
今回は、播種量を300gに増やして苗箱数を減らす密播苗の実証ですが、佐賀県でも、通常の2倍ほどの280gの播種量で2週間くらいで移植する短期苗という技術を提案されています。私の場合、この短期苗を私なりにアレンジして苗をつくっています。佐賀県のマニュアル通りではありませんが、「1箱当たりの播種量を増やして使用箱数を減らす」という考えは同じです。
品種によって播種量・育苗期間を変えて
適期移植に取り組んでいます
コシヒカリの苗は、JAで播種してもらいますので慣行の160gですが、夢しずくは短期苗として、播種量を230gに増やしで育苗日数は20~30日で移植します。
また、ヒノヒカリ、ヒヨクモチについては、120gと薄播きにして35~40日で移植します。作業効率を考えて同じ日に播種し、品種によって播種量と育苗日数を変えることで、田植えの時期を分散させて適期移植ができるようにしています。
箱数については、この地域では、栽植密度を50~60株で移植してる人が多いので、10a当たり20箱くらい使用してると思います。私のところでは、42株の疎植を組み合わせて、夢しずくで約9箱、ヒノヒカリ、ヒヨクモチは約14箱です。かなり苗運びの負担が少なくなっていると思います。
慣行栽培で10a当たり20箱の苗箱数が、
実証では約6箱に削減できました!
今回の実証の目的は、密播苗による育苗の省力化です。それにプラスして、除草剤、殺菌殺虫剤、スクミリンゴガイ防除剤、これらの同時処理による省力化を合わせて実証します。
佐賀県では、2014年から短期苗移植栽培に取り組んで普及に努めています。この短期苗は、2週間くらいで苗をつくるというものです。通常は、20~25日で、葉齢は2.5~3.0葉くらですが、短期苗は、14日程度で1.8葉くらいの若苗を移植します。昔の乳苗移植だったら、専用爪とかが必要だと思うんですが、この苗はお手持ちの田植機で移植できるというのがポイントです。1箱当たりの播種量を慣行の約2倍の280gほどに増量します。クボタさんの提案する今回の密播苗は250~300g※と言われていますので、同じコンセプトの技術だと考えています。
※品種によって異なります。
一般の農家では、栽植密度60株で、苗箱を10a当たり20箱程度使用します。今回の実証区では、約6箱で終わりました。45株の疎植の効果も加わっていますが、苗箱の数量だけを見ると大幅な省力化が図れていると思います。これから生育を調査しながら経営効果を実証していきたいと思います。
被害の大きいスクミリンゴガイによる食害。
移植同時の防除剤散布は効果が大きいと思います
密播苗は、小さくて軟らかいので、スクミリンゴガイの食害を受けやすいんですね。今回、ジャンボタニシくんというスクミリンゴガイ防除剤を移植と処理しますので、食害を減らせるんじゃないかと思います。この地域は、けっこうスクミリンゴガイの密度が高いので、田植えをしたら、その夕方には防除剤を散布しないと夜のうちに食べられてしまいます。ですので、移植と同時に散布できるというのは、重要なことだと思います。江口さんは、基本、水管理で対策をされていますが、レーザーレベラーで均平をとっていますので、落水管理ができるのだと思います。普通は、田面に高低差があれば、水の溜まったところで食害が発生しますからね。