クボタ ソリューションレポート #3
山口県|
とうもろこし|
子実用とうもろこしは、北海道を中心に生産されていますが、そのほとんどを輸入に頼っています。しかし、近年の子実とうもろこしを含む濃厚飼料の価格高騰により、水田転作の戦略作物として国内での子実用とうもろこしの生産に期待が高まっています。そのような中、今年山口市から誘いを受け、県で初めて子実用とうもろこしの実証栽培に挑戦しているのが、㈱農園屋 五葉の山根さんです。4月16日に実施された播種作業を取材しました。
【 耳より情報 】
❶ 水田転換畑における新たな転作作物「子実用とうもろこし」の生産に期待が高まる!❷ 農業者の経営安定につなげようと、山口県で初めて実証栽培を実施
❸ 播種は大幅な省力が図れる、一発耕起播種機「トリプルエコロジー」を使用!
大豆も播けるなんて、
オールマイティな播種機だね!
トリプルエコロジーは、とうもろこしだけでなく、大豆の播種にも使えて、汎用性がある。こういうオールマイティな機械が一番、農家にとってはメリットがある。導入コストが抑えられますからね。これは魅力ある機械ですよ。
これから需要がある!とうもろこし子実
飼料用米を栽培し、地元の畜産農家に卸しています。畜産農家は、とうもろこしを輸入していますが、安定供給できるのであれば、国産のとうもころしも必要としているんです。また、山口市は養鶏農家も多いのですが、これもほとんど輸入飼料を使っています。
今なら自分たちがつくるとうもころしの価格でも高騰している輸入とうもろこしに対抗できると思いますので、これから先、需要が伸びるのではないか、やってみる価値があると思い挑戦に踏み切りました。
とうもろこしの単価が安いからこそ、
コストが抑えられるトリプルエコロジーが良い
今回、クボタの播種機「トリプルエコロジー」で播種しましたが、これ一台で耕うん・播種が一回でできるのが、良いですね!子実用とうもろこしは、単価が安いので、このためにわざわざ作業機をたくさん買ってまで、やりませんから。お金が掛からないのが一番。しかも、作業時間が減ってオペレータがラクになるのもメリットの一つですね。
機械の運搬の手間が省け、
この1台で色んな作業ができ効率が上がる
倉庫が遠いので、いちいちここまでたくさんの機械を運ぶのは、時間も労力も掛かって大変です。でも、トリプルエコロジーなら、これ1 台ですぐに播ける。作業のつど、機械を運ぶ手間も省け、作業効率が上がります。
今後はいかに儲けるかを追求していきたい!
播種後は、雑草との戦いになるでしょうね。ポイントとなる管理はそれだけかな。手が掛からないと聞いたので、それも大きなメリットです。今は米価も安く、経営者としては、いかに儲けるか?が課題です。そうなると、飼料用とうもろこしや飼料用米に取組み、省力化を図ってコスト削減をしていきたいんです。
畜産農家とも話しましたが、「販路の確保ができた上で、この取り組みが成功すれば、私もやりたい!手を挙げる人が多い」と、睨んでいます。そのためには助成金などの支援で、行政もバックアップして欲しい。儲かる農業を追求していきたいです。
1. 水田転換畑での栽培
1)排水対策
飼料用とうもろこしは、大豆や麦に比べると湿害に強いと言われますが、飼料作物の中では湿害に弱い作物です。そのため、水田で麦・大豆を栽培する場合と同様に、明きょや暗きょを施工し、地表排水や地下排水を促して、排水対策をしっかり行います。
2)施肥
子実用とうもろこしは、目標収量を1t/10aとした時、子実の部分に約10㎏、茎葉の部分に約10㎏、合計で約20㎏の窒素が必要です。窒素の要求量が非常に高いため、堆肥や化学肥料等を基肥からしっかり施用します。追肥が必要な場合、5 ~6葉期頃に施用します。散播する場合は、薬害が出ないよう葉が乾いている時に実施して下さい。
サイレージ用とうもろこしは、茎葉も含めて収穫するため、多量の窒素が圃場から持ち出されます。これに対して子実用とうもろこしは、茎葉部を圃場に残すため、吸収した窒素の約半量を有機物と一緒に圃場に還元できます。そのため次の作物を栽培する際、その窒素を活かすことができ、地力の安定に貢献します。また、根の貫通力が耕盤に貫入できるほど強く、排水性が改善されると言われています。
2. 播種
1)品種
とうもろこしの品種には、早晩性を表す相対熟度(RM)という数値(単位 日)が表示されています。この数値を目安にして、地域の気象条件に合った品種を選定します。北海道では当然、極早生品種になり、東北ではそれよりも相対熟度の長い品種を選定します。この他、耐倒伏性、耐病性(ゴマ葉枯れ病、ススモン病等)も品種選定の重要な特性です。
暖地では台風の襲来や、重大害虫であるメイチュウ等の食害の問題がありますので、春播きの場合、東北地方で栽培されているような早生品種を播種します。今回の実証で使用した品種は、RMが「108日」です。この品種の場合、4月中旬に播いて9月上旬くらいに収穫することになります。九州では夏播きも可能ですが、温度が高く早生品種では大きくなる前に出穂してしまうので通常、晩生品種を選定します。
2)播種時期の気温
平均気温が10℃以上になってから播種します。播種が早過ぎた場合、出芽が遅れて苗立ちが揃わなかったり、土壌細菌による出芽不良が生じることがあります。
3)砕土率
実証圃の土壌は、砂壌土で砕土率の問題はありませんでした。しかしながら、粘土質の土壌で砕土率が低いと、出芽・苗立ちが悪くなるだけでなく、土壌処理剤の効き悪くなることがあります。そのため、十分な砕土率を確保します。
4)一粒点播
一粒点播の目的は、倒伏防止と安定した収量を確保することです。大豆のように一株二粒播きとすると、倒伏しやすくなります。倒伏すれば収量が落ち、収穫ロスも大きくなります。そのため一本の株を大きくすることで、茎を太くし根をしっかりと土中深くに伸ばさせ、倒伏を防止します。
また、一株を二本立てにすると、雌穂が小さくなります。一株に二つの雌穂が着いたからといって、収量が二倍になるとは限りません。一株一本立てにして、しっかりと大きな雌穂を作ります。
今回の実演では7,000粒/10aを目途として播種しました。欠株は収量減の原因となりますので、播種量は目標栽植本数よりも1割程度多く設定し、カラスなどの鳥害を避けるため、キヒゲンを塗布してから播種して下さい。
5)一発耕起播種「トリプルエコロジー」について
通常、事前耕うんを行い、点播できる播種機で播種します。今回の実証では、耕起・砕土・播種が同時に行える、一発耕起播種機「トリプルエコロジー」を使用しました。播種前に耕うんされていたので、トリプルエコロジーの利点は発揮できませんでしたが、排水性の良い土壌条件でしたので、一発耕起播種が十分可能でした。
使用できる播種機はいくつかありますが、西日本を中心とした小区画圃場が多い地域では、真空播種機のような本格的な畑作用作業機よりも、小・中区画の圃場に適したトリプルエコロジーがおすすめです。
3. 播種後の鎮圧
【狙い1】 土壌水分を均一に保持する
耕うんした圃場の表層は土壌が乾燥しやすく、下層からの水分供給が十分でありません。鎮圧により表層の土壌水分を均一に保持して出芽を揃えます。
【狙い2】 土壌処理剤の効果を高める
鎮圧後、基本的にはブームスプレーヤーを使って土壌処理除草剤を散布しますが、鎮圧をした方が除草効果は高くなります。
【狙い3】 地耐力を高め倒伏を防止
とうもろこしは草丈が3mほどの高さまで伸びるため、土壌が柔らかいと、どうしても倒伏しやすくなります。このため、しっかりと鎮圧し、圃場の地耐力を高めた土中に根を張らせることで倒伏防止を図ります。
【注意すること】
粘質な土壌条件で土壌水分が高い場合、鎮圧によって土が締まり過ぎ種子周辺が酸素不足となり出芽不良となることがありますので、鎮圧しません。