熊本県で慣行栽培と遜色ない収量を上げた密播栽培 来年度は栽培面積を拡大し本格導入へ! お気に入りに追加
熊本県阿蘇市 密播疎植
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クボタ ソリューションレポート #44

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熊本県で慣行栽培と遜色ない収量を上げた密播栽培 来年度は栽培面積を拡大し本格導入へ!

熊本県で慣行栽培と遜色ない収量を上げた密播栽培 来年度は栽培面積を拡大し本格導入へ!

農家の高齢化や担い手不足という地域が抱える課題を解決するために、密播移植栽培(以下密播)の試験栽培に取り組む阿蘇市の農事組合法人碧水様。5月に移植作業をレポートした密播圃場の収穫作業が9月19日に行われました。今年は8月からの悪天候で、登熟期の日照不足により、地域全体の作柄が平年を下回る中、密播については慣行移植と同等の収量となりました。同法人では、今年の結果を踏まえて、来年度はさらに栽培面積を拡大、経営に必要な低コスト稲作技術として取り組んでいく予定です。

 


 

【 耳より情報 】

❶ 植付けしてからは、普通移植と変わらない管理
❷ ハウスの有効活用や、コスト削減に繋がる密播
❸ アグリロボコンバインの自動運転アシストで初心者でも簡単刈取り

 また当日は、クボタアグリサービス(株)熊本事務所の協力の下、12月発売予定の自動運転アシスト機能が付いたクボタアグリロボコンバインDR6130Aの実演会が行われました。
GPSによって、誤差数センチの高精度な刈取作業が可能で、オペレータが搭乗した状態での自動運転による収穫作業を可能にしたDR6130Aは、農業経験が少ない方でも、簡単で楽に無駄のない収穫が行えます。実演会には多くの地域農家の皆様が見学に訪れ、オペレータが手放しで作業を行う姿に、驚きの声があがりました。

省力・低コスト化のために 今後も密播を続けていきます

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【生産者の声】


 今年は日照不足で、全体的に収量が落ちていますが、密播の出来栄えとしては、慣行移植と遜色がありません。反省点があるとするなら、育苗管理が若干難しかった点です。普通は25日の苗ですが、密播は16日程度の苗で移植しないといけなかったり、風通しが悪いと苗が白くなったり気を使うこともあり、また、今までとは見慣れない苗の風景に心配にもなります。今回育苗に失敗した部分はありましたが、使用箱数が大幅に減ったので、苗が不足することはありませんでした。

 今年3ha行った密播栽培ですが、次年度は6haまで拡大して更に省力・低コスト化を図っていく考えです。反省点を踏まえて、密播の育苗を移植スケジュールに合わせて、2~3回に分けて播種時期をずらせば、苗の老化も防げると考えています。やはり従来16箱程度使用していた苗箱を9~8箱に削減できるのはかなりの省力になるので、密播はやめられないですね。
 コストを下げるためには、密播などの技術を導入していかなければいけません。苗運びも少なくて済むので、負担の軽減にも繋がります。今後の人手不足に対応するには、法人でコストの削減を図れる技術や、機械化できることはどんどん進めて、経営の安定を図っていきたいと考えています。

 今回の収穫作業は、クボタからアグリロボコンバインDR6130Aをお借りして作業を行いました。当地域は1筆の区画が小さい(30a以下)こともあり、自動運転の効果はまだ実感がありません。しかしながら、今後、1区画あたりの面積が広くなれば活躍する機械になると思います。機械の性能自体は申し分無い、あれだけの選別性能があれば完璧ですね。

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慣行移植と変わらない栽培が魅力的です

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【収穫実演会に参加されたお客様の声】

 法人の平均年齢が約70歳という状態です。そのため労力を軽減できるようにと昨年、法人の組合員が密播を試験的に導入しました。その結果が良かったことを受けて、私も今年から共同育苗で密播の試験をはじめました。今の生育状況をみると慣行栽培とあまり変わりがありません。箱数が半減することは、経営の助けになりますね。箱数が削減できれば、肥料や育苗資材も少なくて済む。今年の結果を見て、来年度に密播栽培を増やすか検討したいと考えています。

 私はコンバインの性能を確認するときに、脱穀した際に排わらと一緒にどれだけ籾こぼれがおきるかをひとつの目安にして見ますが、それがほとんど無い立派な機械です。自動運転アシストについては、導入するかはまだ決めていませんが、機械の更新がもうすぐなので、検討材料の一つとして考えたいです。

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実証展示ほのデータを活用して、密播や、密播疎植を普及していきたい

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【担当者の声】

 今年は全体的に生育が遅れ気味でした。8月中旬から雨が続き、収穫時期が1週間遅れたこともあり、去年よりも収量は若干少ないようです。密播に疎植を加えることで、さらにコストを下げることが可能だと考えていますが、今回、10a当り箱数を6.2箱まで減らしたことで竹原さんは植え付け後のほ場が少しさみしいという印象だったようです。穂数は疎植も遜色ありませんが、それが実際の収量にどう繋がっているかですね。更なるコスト削減には密播疎植を推していきたいのですが、今回の展示ほのデータを基に今後の普及の方向性を決めたいと考えています。

 今日の収穫には、クボタのDR6130Aを使用し作業を行ってもらいました。自動運転アシストでの作業はすごいですね。今後法人におけるオペレータの平均年齢が上がることが予想される中で、機械の操作に不慣れな新しい方が入られたときに、ある程度半自動化がなされていれば、経営の戦力としてすぐにでも作業に取り掛かれるのではないでしょうか。

 今年度の(農)碧水で行った密播栽培の結果で、さらなる密播栽培への普及の期待が高まりました。今年の結果を受けて、3月に行われる地域営農法人の研修会で私達が調査したデータを各法人に発表し、各々どういった反応になるか期待が膨らみます。

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生育調査の結果

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春作業の省力化を考えると密播を導入する価値はあります

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【クボタ技術顧問による解説】

 出穂してから毎日の平均気温の積算で収穫の目安がわかります。コシヒカリの場合は900度くらいと言われており、気温が高いときは生育期間が短くなります(平均気温が30度で、30日の生育で900度)。今年は雨が多く気温が低めだったので、平年より収穫は遅れ気味です。阿蘇の場合、8月初旬に穂が出てから、1ヶ月間が登熟期間になります。そのため、8月の日照不足はかなり影響を受けており、確定的なことは言えませんが、全体的な収量は平年より少ないと推測しています。慣行移植も含めての結果ですので、密播だから収量が落ちるということではありません。密播は春作業や田植えの労力が大きく省力化され、育苗資材費等が削減される点を考えれば、導入する価値があると考えています。密播は、育苗時の管理が大切です。育苗時の管理がしっかりし健苗であれば、移植後は慣行移植の管理と同じなので、生育に違いはありません。西南暖地は温かい気候のため、苗が伸び過ぎないようにすることが重要です。

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