クボタ ソリューションレポート #37
スマート農業加速化実証プロジェクト
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稲|
令和元年6月28日、宮城県東松島市で、スマート農業実証プロに取り組む、超低コスト「輸出米」生産実証コンソーシアムの主催で、「スマート農業機械現地実演会」が開催されました。
主催:超低コスト「輸出米」生産実証コンソーシアム
協力:みやぎスマート農業推進ネットワーク
【 耳より情報 】
❶ 宮城県内すべての大規模土地利用型経営体でスマート農業技術導入を目指す❷ 水稲生産コスト25%削減「7,000円/60kg」の低コスト稲作を目標
❸ 100ha規模のスマート農業実践農場が次々と誕生
❹ 新規参入者や若者が憧れる「スマート水田農業」の実現
【大規模土地利用型経営体で、スマート農業技術の一貫体系を実証】
ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用するスマート農業技術は、作業の自動化、管理の最適化など生産性を飛躍的に高め、農業の持続的な発展に不可欠な技術です。そこで宮城県では、大規模土地利用型経営体で、生産から出荷まで一貫作業にスマート農業技術を活用した現地実証を行うため、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」に応募、採択されました。
その一環として、令和元年6月28日、実証農場である東松島市の(有)アグリードなるせの小麦・大豆ほ場において、「スマート農業機械現地実演会」が開催されました。今回の現地検討会には、小雨が降る悪条件の中、生産者や関係機関の担当者約200名が参加。農業現場のスマート農業に対する関心の高さを示しました。
検討会は、実演に先立ち宮城県農政部の高橋久則次長と、農林水産省の鈴木良典東北農政局長(現・大臣官房生産振興審議官)が挨拶。引き続き、宮城県農政部の木村政浩技術補佐が、実証の概要を説明した後、クボタの協力の下、「食味・収量測定機能付き自動走行コンバイン」による麦収穫作業、「アグリロボトラクタ」による無人耕起作業、「高速汎用播種機」による大豆播種作業の実演が繰り広げられました。
【スマート農業技術の導入・活用で、農業を若者が憧れる魅力ある産業に!】
本県の農業は8年前の震災から復旧復興の過程で大きく生産構造が変化し、沿岸部では水田の区画が1ha区画となり、担い手として多くの農業法人が設立され営農を行っています。また、内陸部に置きましても、農地中間管理事業などを活用して、農地の集積、集約が進み、経営規模が拡大しております。H30年3月末で県内では100ha規模の土地利用型経営体が20法人となっており、今後増加傾向にあります。経営規模の拡大に伴い、労働力不足、若い後継者等の経験、技術力不足が課題となっております。こうした課題を解決し、省力化や新規就農者がベテラン農業者と遜色ない作業を行うことが出来るICT、AI、ロボットなどのスマート農業の技術導入が不可欠となっております。
そこで、本県は、国のスマート農業開発・実証プロジェクトに応募し、採択を受けました。今回の実演会場の圃場をお貸しいただいている(有)アグリードなるせ様が水田作分野の実証大規模経営体として採択されています。このプロジェクトは生産から出荷までの一貫体型の中で、スマート農業技術を導入して、作業効率に関わる導入効果や経営効果の検証を行い、その成果について広く普及を図っていくものとし、スマート農業について、「見られる、試せる、体験できる」という位置付けともなっています。そして、県として全国に先駆けた「スマート農業先進県」を目指し、すべての大規模土地利用型経営体で、スマート農業の技術導入・活用がなされ、「農業を若者が憧れる魅力ある産業」となるように、みなさんと一緒に取り組んで行きたいと思います。
【生産現場の課題解決において大きな鍵となる「スマート農業」】
我が国の農業は様々な課題がありますが、将来に向けて発展していくのには、「基盤整備」、「人(担い手)」、これに加えて、「スマート農業」が現場の皆様の課題を解決していく大きな鍵になると考えています。このスマート農業技術の開発・実証プロジェクトでは、実証で得た色々なデータを収集・分析し、情報を発信することで、生産現場の改善につなげたいというのが私たちの想いですし、実証農場の皆様には、そういう目的でお取り組みいただいております。今日は多くの皆様が参加されておりますが、スマート農業機械を実際にご覧いただいて、「うちはこういうところが困っているが、これを使えば解決できるのではないか」と、そのように感じていただければ非常にありがたいです。
【2年3作・3年4作体系で、
スマート農業機械を汎用利用したコスト削減効果を実証】
今回、国の「スマート農業技術開発・実証プロジェクト」には、全国では252件の応募があり、そのうち69件が採択されております。その中の一つが、私どもが組みましたプロジェクト課題です。このプロジェクト課題につきましては、水田の利用効率を上げるため、2年3作、3年4作体系に取り組んでいますが、稲・麦・大豆後の子実トウモロコシという作型の中にスマート農業機械を汎用利用していき、コストを削減することを第一の目標として取組みを進めていきます。そのためにはどのような課題があるかをこのプロジェクトの中でしっかり検証していきたいと考えています。また、ドローンを使用したリモートセンシングや、食味・収量センサ付きコンバインで圃場毎のデータを取りながら、そのデータを蓄積して、経営なり、生産情報の見える化を行い、それを若い従業員の方と一緒に共有して、経営改善に取り組んでいくところも含めて実証をしていきたいと考えています。
宮城県では、スマート農業技術の普及に向けて、農業者と産学官による情報交換の場として「みやぎスマート農業推進ネットワーク」を構築しています。スマート農業の情報をしっかり皆様方に伝えていく、検討していく場として取り組んでいますので、ネットワークを通じて、「スマート農業先進県」として普及拡大を推めていきながら、若者が憧れる宮城県の農業につなげていければと思います。
実演内容
「食味・収量センサ付き自動走行コンバイン」による麦収穫作業
オペレータが搭乗した状態で自動運転し、稲・麦収穫作業をアシスト。前進刈取り、旋回(αターンまたはUターン)、刈取り・脱こくクラッチの入/切、刈取部の昇降、方向修正、排出ポイントへの移動、エンジン回転数の調節を自動で行うことができます。
「アグリロボトラクタ」による無人耕起作業
人が乗車しないで、無人での自動運転作業を実現。リモコンによる遠隔指示で、作業開始・停止が行えます。高度なGPSと自動運転による、精度の高い耕うん、代かき作業が可能になります。
「クラウド型圃場管理システム」と対応機種の連携
食味・収量メッシュマップ機構により、刈取りしながら、圃場内の収量・水分・タンパクを自動で測定し、営農支援システム「クボタスマートアグリシステム(KSAS)」にデータを記録。翌年の作付けに活用して、生産性向上につなげます。
「高速汎用播種機」による大豆播種作業
水稲(乾田直播)、麦、大豆、そば、トウモロコシ、牧草など幅広い作物に対応できる高速汎用播種機。不耕起圃場でも作業が可能で、汎用利用によるコスト削減が期待できます。 また、トラクタに自動操舵補助システム(オートステアリング)を装着することで、オペレータの習熟度に関わらず高精度な作業が可能です。
【スマート農業で、水稲の生産コスト25%削減を目指す】
今回の実証プロジェクトでは、水稲の生産コスト「25%削減」をひとつの目標としています。中でも汎用播種機は、水稲、大豆、麦、子実トウモロコシと4つの作物をこれ1台で作業でき、機械の汎用利用による生産費の削減につながります。麦後の不耕起圃場での大豆播種については、麦稈を心配していたのが、問題なく播種されていたので、それ相応の評価ができるんじゃないかなと思います。最終的には、農薬の削減を考えて、播種後にアグリロボトラクタにモアを装着して麦稈の刈取作業などを行うことによって、マルチ効果を期待しています。まだスタートしたところですが、各分野において、省力化、低コスト化という面では、目標通りに進んでいると感じています。