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稲作経営の体質強化発展を目指すクボタトータルソリューション米戦略
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大規模化に向けた低コスト・省力化稲作技術#02

稲|

水稲鉄コーティング直播栽培の新たな推進方針について

水稲鉄コーティング直播栽培の新たな推進方針について

クボタでは、平成17年から10年間にわたり、省力、低コスト稲作栽培技術の「水稲鉄コーティング直播栽培」の実証導入に取り組んで参りました。この間、多くの課題解決に向けて、関係機関、団体及び関連メーカーと連携、協力の下、機械、関連機器材、除草剤、農薬、肥料、資材などの開発、普及に努め、ここに「鉄コーティング一発体系⇒播種したら収穫」体系が実現しつつあります。
 今回、鉄コ直播栽培の実証普及10年を一区切りとし、次のステージとなる推進課題及び本年確立したトータルソリューション米戦略を提案します。
(この記事は、平成27年11月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.32』を元に構成しています)

 


 

1.鉄コーティング直播栽培一発体系

従前から生産者の方の要望が多かったことから、平成27年10月から新たに、播種機に装着して、播種と同時に殺虫殺菌剤を種子直下に施用できる「土なかくん」を発売し、業界で初めて直播栽培で播種同時病害虫薬剤の防除体系ができるようになりました。

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2.新たな省力、低コスト主要課題

 次の課題を、国の方針に則り今後のステージの提案課題として推進を図ることにしています。

(1)主食用米40-KSAS推進
 主食用米の生産コスト40%削減を目標に、移植並み収量を確保するとともに、KSAS(クボタスマートアグリシステム)連動による「収量」「品質」「食味」の向上を図り市場競争力の強い米つくりを推進します。

(2)飼料用米50-700推進
 飼料用米の生産拡大は、米政策の重要な課題となっており、生産コストを50%削減し、収量700キロ以上/10aを目標に推進します。

(3)飼料イネ(WCS)50-2500推進
 飼料イネ(WCS)も水田フル活用や耕畜連携により、稲作経営及び畜産経営の発展と地域農業の振興、活性化を図るために重要な課題であり、生産コスト50%削減を目標に、飼料イネ2,500キロ以上/10a(1個300キロロール、8個以上)の生産を確保します。

3.市場競争力のあるコメづくりの目標

(1)10a当り稲作労働時間を60%削減
 経営規模の拡大、圃場整備による大区画化、大型機械化の進展などにより、わが国の10a当り稲作時間は、年々減少しておりますが、さらに60%削減を目指します。

(2)生産コスト40%削減
 国内コメの産地間、市場競争が激化する中、生産コストを大幅に削減し、消費者ニーズに応える値ごろ感のある米の供給やグローバル市場に対応するコメ輸出を支援できる生産コスト40%削減を目指します。

4.今後の稲作経営の推進方向

(1)農業構造の二極化への対応
 販売農家数で見た農業構造の変化は、経営面積5haを岐点に加速し、5ha未満では減少し、5ha以上は大きく増加しています。
 大規模層では移植栽培と鉄コ直播栽培を組合せて、春秋の労働ピークの山の解消と作期分散による機械施設の効率利用を図ります。
 一方、小規模や高齢農家では、省力、軽労化が重要な課題となっており、苗づくりや苗運び、田植え作業などが不要な省力、軽労化の鉄コ直播栽培で、生涯現役のコメづくりを応援します。

(2)農村女性、農業女子と若い農業者、農業後継者への対応
 近年、女性農業就業者や農業後継者は減少していますが、新規就農者数は増加しており、これを加速するため、女性や農業後継者が喜んで就農し、受け入れられる新技術及び機械化でなければならないと考えています。
 この鉄コ直播栽培は、各県の農業高校生、農業大学校生の実習授業に導入され、若い担い手層の皆さまや稲作農家の女性の方々から、スニーカーや普段着で作業ができると好評を得ています。

(3)実証試験、実演会、研修会実施、開催への対応
国、都道府県の関係機関、JA全農、農業団体及び当社グループ販売会社などで、研修会、成績検討会、各種イベント、展示会などで、多くの生産者、指導者の参加を賜り、盛況を博してきました。今後も産官学連携の下、強い稲作経営と地域農業の発展、元氣農業を推進します。

5.おわりに

 わが国の稲作技術は、世界に冠たる高度、先進化で、長年作柄概況の安定と品質、食味向上及び安全性の面で優れていますが、海外に比べ生産コストが高く、市場競争に打ち勝つことと内外価格差縮小に対応するためには、新たなイノベーション「鉄コ直播栽培」の普及拡大を更に加速させる必要があると考えています。
 当社がこれまで推進してまいりました栽培技術、機械、器材、肥料、農薬、資材などの開発、実証には、国、都道府県の行政、研究機関やJA全農、農業団体、関連メーカーなど多くの皆様のご支援を賜りました。
 ここに感謝を申し上げますとともに、なお一層のご支援、ご協力をお願い申し上げます。

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