開発陣が語る、REXIA GSに込めた想いとこだわりとは? お気に入りに追加
クボタトラクタREXIA GS開発者インタビュー
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2023年7月、好評の新型REXIAに直進アシスト(GS)機能を搭載した、REXIA GSが発売されました。GS機能が搭載された小型・中型トラクタを既にお使いの方からは、「直進作業が格段にラクになった」「運転操作に不慣れでも、ベテランオペレータと同じような精度で作業できる」といった嬉しい声が届いており、現在では新車販売の5台に1台をGSトラクタが占めます。今回、60~70馬力帯の大型トラクタにも待望のGS機能が搭載されたことから、開発のキーマンにこだわりの機能や進化した点をお伺いしました。

様々なこだわりが注ぎこまれた REXIA GS

もっとラクに便利に。開発の手を緩めない

近年、高齢化による離農者の増加に伴い、受け皿となる担い手の経営面積が大規模化。直進時のハンドル操舵を必要とせず、作業者の身体的・精神的な負担を大幅に軽減する、「GS機能を大型トラクタにも搭載して欲しい」と言う声が数多く上がっていました。

「REXIA GSでは好評のNB21GS、Slugger GSの基本機能を継承しながら、経験年数を問わず、ラクに便利に使いこなせる機能を新たに盛り込みました」と開発の想いを語るのは、研究担当の川西さん。使う人のことを第一に考えた、快適な操作性・機能性を徹底的に追求したと言います。

トラクタ技術第二部 川西さん。部品の組付け性や強度・耐久性の確認、ステアリング制御性能の評価を行う

KSASと連携。GS機能がより使いやすく便利に進化

「GS機能を使う場合、走行経路を決める基準線をつくりますが、A点(始点)/B点(終点)を登録して基準線を作成する従来の方法に加え、今回は初心者でも簡単に基準線がつくれるよう配慮しました。その一つが『GSリンク』です」。

GSリンクを簡単に言うと、スマートフォンを利用して、過去に作成した基準線が次回以降、使える機能のこと。KSASと連携し、REXIA GSで作業を行うと基準線が自動的にKSASサーバーに登録されます。次からは登録された基準線をKSASアプリで呼び出すだけで、すぐに直進自動操舵が可能に。設定の手間が省ける、クボタならではの新機能です。

「2つ目が『らく直アシスト』です。トラクタを走らせたい方向に自動で基準線がつくれるので、回り耕や変形ほ場でもAB点登録なしで直進自動操舵ができるようになりました」。
また、これまで直進自動操舵を開始するには、レバー操作やスイッチ操作が毎回必要でしたが、新たに装備した「かんたんスタート」を事前にONすると、条件が揃えば自動で直進操舵を開始。旋回が余裕を持って行えます。

GSリンク使った時のスマホ画面。黄色の線が基準線。REXIA GSで作業すると自動的に基準線が登録される

何よりこだわったのは直感的な操作

さらに操作性向上のため、新たに搭載したのが音声ガイダンスです。ガイダンス指示やエラー情報を音声で案内することで、運転操作や本機の制御状態をスムーズに把握することが可能になり、より作業に集中できるようになりました。

「快適に作業できるように、ガイダンスをオペレータ目線の分かりやすい内容にしたり、案内のタイミングも工夫を凝らしたりするなど、細かな調整をしました」と解説する反甫さん。液晶モニタも「アイコンを大きくし今まで以上に見やすいよう、ブラッシュアップした」ことでGS機能が直感的に操作できます。

GS機能の制御、モニタ画面の設計、機能開発を担った、機械研究開発第六部所属の反甫さん

RTK-GNSS(GPS)に対応。高精度作業が可能に

また、REXIA GSの大きな進化点として、GPSアンテナのアップグレードを可能にしました。自動操舵を行うには、測位衛星からの情報と補正情報を組合せてトラクタの位置を把握しますが、RTK-GNSS(GPS)アンテナを装着し作業することで、より高精度な位置情報が得られます。

これにより、高い直進精度を求める播種やあぜ塗り、うね立てマルチなどを行う、お客様のニーズに対応。「GSトラクタは比較的安価なDGPSを使用しつつも、制御の工夫を重ねることで誤差の少ない直進アシストを実現していましたが、今回、より精度の高いRTK-GNSSに対応することで、耕うん時も設定したラップ幅(作業幅の重なり)の値に近い、より高精度な作業が行えるようになりました」。

実は、精度向上の背景には苦労もありました。「GPSの精度が上がったことで、これまでGPSの誤差と判断していたズレは、実際には他のセンサに起因していることが明らかとなり、精度向上のために新たな対応をする必要に迫られました」と反甫さん。「そこで、トラクタの姿勢を計測するセンサの計測精度を高めることで、RTK-GNSS(GPS)に対応する精度を確保しました」。

1本飛ばし作業もまっすぐ正確に行える

水田・畑作はもちろん酪畜も。対応インプルメント拡充

畑作作業もGSで、まっすぐラクに

REXIA GSの特筆すべきもう一つの点に、畑作や牧草関連のインプルメントに対応したことが挙げられます。しかし、GS機能搭載には、「大型トラクタならではの難しさがあった」と振り返る、反甫さん。具体的に苦労した点とは、どのようなことでしょうか。

「一つは、条件に応じた直進精度の確保です。Slugger GSは水田で使われることが多く、タイヤ幅やトレッド幅がほぼ一定です。一方、大型トラクタは、畑や牧草地など様々なほ場で使われ、タイヤ幅やトレッド幅、タイヤの大きさも含めると多種多様です。それゆえSlugger GSと同じようなステアリング感度設定の範囲では、目標とする直進精度を達成することが難しいと判明したのです。そこで、ステアリング感度の設定値をこれまでより広めに設定できるように改良。これにより、ほ場条件やトラクタの仕様に応じた、精度の高い直進作業が行えるようになりました」。

「二つ目は、高速作業域での直進精度の維持です。大型トラクタは、牧草作業など高速で行うことも多く、スピードを上げ作業している途中に、石や残渣などを踏んだ場合など、基準線から大きくずれることがありました。そこで、ハンドルを敏感に切るか、鈍感に切るか。また、ハンドルを切る大きさはどうか、テストをしてはチューニングをすることを繰り返して、最適解を導き出し直進精度を高めました」。

緑肥のすき込み作業

新たにプラウ作業もできるように

さらに、REXIA GSはプラウ作業も、高精度にできるようになりました。川西さんは「適応インプルメントを拡充しようと意気込む中、プラウ作業への対応は特に苦心した」と、振り返ります。理由は「けん引負荷が高いため、横に機体が引っ張られ、タイヤが溝に落ちやすくなることでした」。

そこでREXIA GSでは、位置ずれを補正できる「『GS補正スイッチ』を、短押しから長押しできるように設定を見直し、軌道修正を簡単に行えるようにしました」これにより、あたかも手動でハンドル操舵をしているような、なめらかな動きで機体を直進方向に戻せます。

「プラウ作業は操作が難しく、テクニックを必要とするので、REXIA GSでまっすぐラクに、しかも簡単に作業できるのであれば、やってみたい方も増えるのではないでしょうか」と、川西さんは手応えを口にします。

REXIA GSでは丘曳きプラウ作業ができるようになった

胸を張れる自信作。進化をご体感ください

開発にあたって「現地に何度も赴き、現場を熟知するディーラーやお客様の意見・ニーズを製品に落とし込む作業を繰り返し行いました。その中で『今でも十分だが、もっと良くなる』と議論が深まる場面が多々あり、常に高い志を持ったメンバーが一つとなって改良に改良を重ねてきました」と語る川西さん。

反甫さんは「自動操舵は、自動操舵ユニットとインプルメントのマッチングが非常に重要です。REXIA GSは、検証を繰り返し行い、インプルメントごとに最適なチューニングを行っているので、安価なD-GNSS(GPS)を使用しながらも、高い直進精度が得られることが大きなポイントで、自信作です」と力を込めます。川西さんも「より便利にお使い頂ける機能を数多く搭載しています。試乗して頂ければ良いものだとご理解頂けると思います。ぜひ、実機にてご体感ください」と胸を張ります。

先進技術を駆使し、細部までこだわり抜き、機能性と快適性を極限まで高めた、REXIA GS。そこには、使う人にとって「真に役立つ製品は何か」を共通目標に、お客様に寄り添い開発に挑む、クボタの技術者の想いが余すことなく込められていました。

各部門のプロフェッショナルが知見やアイデアを持ち寄り、粘り強く開発にあたった

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