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水田輪換畑における営農排水技術
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水田のフル活用・高度利用で経営の安定化と地域の活性化#02

稲|

目的とほ場にあった排水対策を実践しよう

目的とほ場にあった排水対策を実践しよう

近年、食料自給率向上のために注目されている水田のフル活用・高度利用。水田に麦・大豆や野菜を作付する際に欠かせないのが、排水対策です。水田の排水性や排水悪化の原因は、個々の水田によって異なり、水田に合った対策が必要です。ほ場の条件や、排水目的に適した営農排水技術をご紹介します。

 


 

水田土壌と排水性

 水田の排水性は、地下水位(排水路の水位)と、土壌中の水の流れやすさ(透水係数)に大きく左右されます。例えば、地下水位が高い土壌では、水田の汎用化のためには、ポンプ排水によって地下水位を低下させるか、地表からの排水に重点を置き、高うね栽培によって、相対的に地下水位を下げて湿害を回避しなければなりません。一方、土壌の透水性が小さな土壌については、土づくりや耕盤破砕などの営農的な技術によって排水性を改善する必要があります。最近では、灰色低地土、褐色低地土や砂質な土壌の中にも、硬く、緻密な耕盤の形成によって排水条件が悪化している水田が見受けられます。

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地表排水技術の選択

 水田に降った雨は、地表からの排水、地下への浸透・排水と、作物や田面からの蒸発散によって排水されます。耕盤や心土に大きな孔隙のない土壌では、入った水は1日で1㎝も移動できません。そのため、ゲリラ豪雨の場合、地表からの排水を進めないと、長時間に田面に湛水が発生し、作物への湿害や適期作業の遅れをもたらします。そのため、排水対策として、地表排水技術が最も重要になります。
 地表排水技術には、明きょ、うね立て、田面の傾斜化の大きく3つの技術があげられます。
① 明きょ
 豪雨がどこでも頻繁に発生していることから、明きょは、麦、大豆、野菜栽培にとって、必要不可欠な技術です。
② うね立て栽培
 地下水位や排水路の水位が常に高く、豪雨で度々湛水するような圃場や湿害に弱い野菜などの場合には、うね立て栽培(高うね)が必須となります。
③ 田面の傾斜化
 水田の汎用化とともに、田面の凹凸が増え、圃場中央や、用水路側の田面が、排水路側よりも低くなり、排水が悪化している圃場が多く見られるようになっています。このような場合、レーザーレベラーでの田面の傾斜均平が必要です。

地下排水技術の選択

 作土が浅く、硬い耕盤が存在する場合、湿害や干ばつを起こしやすく、耕盤・心土破砕の施工によって湿害や干ばつを回避し、根圏の拡大を進める必要があります。
 できた亀裂の水や地下水位を下げるために地下排水が重要です。
①心土が硬い土壌
 乾田で耕盤や心土が硬く緻密な土壌は、耕盤・心土破砕を施工します。通常の耕盤・心土破砕は、サブソイラのように一本の刃にチゼルやウイングなどをつけたものから、広幅な耕盤・心土破砕を行うハーフソイラやプラソイラ等があります。水分や、粘土の多い土壌ほど、広幅な耕盤・心土破砕が適しています。
②心土が膨軟・軟弱土壌
 湿田で粘土質で土壌水分が多く、心土が膨軟な土壌は、弾丸暗きょやカットドレーンで通水空洞を作り、水みちを作ります。
 心土が膨軟で軟弱な土壌は、モミサブローで有材(モミガラ)耕盤破砕の施工をすれば、長期に亘って水みちが確保できます。
 弾丸暗きょやサブソイラ等の施工は、土壌ができるだけ乾いた時期に、ゆっくりと施工するのが基本です。施工速度が速いほど、できた亀裂や孔は元に戻りやすくなります。

作付体系と排水対策

 水田フル活用の代表的な作付体系として稲・麦・大豆の二年三作があげられます。水田フル活用では、ブロックローテーションを行うことによって、畑作物栽培ブロックでは、地下水位を下げることが可能になり、水稲作付けブロックでは過剰な漏水を防ぐことができます。
 水稲の栽培時には、溝切り、中干しをしっかり行い、排水性を改善することによって、その後、収穫直前まで入水でき、水稲の品質が向上します。また、収穫作業もスムーズに行え、麦播種前の額縁明きょなど、排水対策も適切に行うことができます。
 土壌が比較的乾いている場合、サブソイラなどの地下排水対策も行います。土壌条件が悪い場合、額縁明きょと、麦播種時の小明きょによる地表排水を中心に排水対策を行います。
 大豆播種期が梅雨に重なる地域では、麦前の排水対策は重要になります。大豆播種前には、額縁明きょを手直しし、加えて、サブソイラなどの地下排水対策を行います。
 麦、大豆栽培時の排水対策によって、出芽・苗立ち率や除草剤の効果が向上し、収量・品質の向上に繋がります。
 野菜を栽培する場合、高いうねを立てて、うね間の排水を進めます。うね間の水は、額縁明きょから排水口へ導きます。長いうねの場合、うねを途中で切り、額縁明きょに繋ぎます。うね間の水を明きょに導くことで排水効果が上がり、野菜の生育向上につながります。

おわりに

 排水改善は、余剰水の排除によって、土壌の乾燥を進め、湿田の乾田化、水田の汎用化を促進します。しかし、乾燥とともに有機物の分解も進みやすく、地力の低下に繋がる恐れがあります。持続的な水田農業を進めるには、排水対策とともに、堆肥などの有機物の施用によって土づくりも進めなければなりません。

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