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タマネギの産地化を狙う >> 福岡県嘉麻市
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クボタファーム探訪

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「株式会社FKKファーム」

「株式会社FKKファーム」

農業の担い手不足等の問題を抱える嘉麻市で、株式会社福岡九州クボタと市が農業振興を目的とした包括連携協定を締結。そこから生まれたのが、タマネギの産地化を目指す
「株式会社FKKファーム」(福岡九州クボタ100%出資)です。儲かる農業モデルとしての取り組みと、タマネギ栽培を通して見えてきた課題と今後の展望について取材しました。
(この記事は、2019年2月発行のクボタふれあいクラブ情報誌「ふれあい」39号を元に構成しています。)

 


 

官民一体で農業振興を!二毛作を進めて収益アップ

 福岡県のほぼ中央に位置する嘉麻市。市域南部に筑紫山地が連なる中山間地域で、過疎化とともに、農家の後継者不足や高齢化、耕作放棄地などの問題を抱えています。そこで2017年1月、福岡九州クボタと嘉麻市は「農業振興に関する包括連携協定」を締結。市の農業に関する課題の解決と、基幹産業の強化を目的とする協力関係を結びました。
 当初、福岡九州クボタが手がけたのは、地元の酒蔵で造る日本酒の開発でした。この地域では早期米の栽培が主流で、裏作をするには難しい体系でしたが、早めに収穫できる新品種米を栽培することにより可能に。その米を使った6次化商品として海外展開も視野に入れた日本酒「一丸桜」を生み出しました。
 一方、稲作の裏作として提案したのが、タマネギ栽培です。タマネギは健康効果が高いうえ、産地が限られていて、鳥獣被害が少ない点に注目したとのこと。さらに、「農地の裏作利用で生産者の収益を上げ、儲かる農業のモデルを作りたい。官民一体で農業の仕組みを変えたい」と熱く語るのは、嘉麻市出身の手嶌忠光社長。こうした経緯から、先の包括連携協定締結からわずか3ヶ月後、2017年4 月に、福岡県でのタマネギ産地化を目指す「株式会社FKKファーム」が設立されたのです。

タマネギ栽培の課題を確認 地域との信頼関係も重視

 もともとタマネギの育苗については福岡九州クボタで知見がありました。しかしタマネギ栽培全体については経験者がいなかったため、1年目は手探りのなかで進めました。タマネギの生産技術の研究をするなかで、とくに力をいれたのが排水対策。水田は、そのままではタマネギ栽培には不向きなので、表面排水を目的とする明渠や、地下浸透排水ができる暗渠などで、排水対策を実施しました。そして経営視点での改革。ほ場ごとの工程を細分化し、KSAS(クボタスマートアグリシステム)を活用して綿密な栽培記録をつけることで作業の改善点を徹底的に洗い出し、次年度の計画につなげました。
 そして、地権者や生産者等地域の方々からの問題指摘の声にも応えていきます。大切にしたのは、ディスカッションなどの場を設け、地域農業の活性化に関する構想を丁寧に伝えていく姿勢。これらの努力が認められ、活動を理解してくれる人の輪が広がり、「頑張れよ」と応援されるようにもなりました。
 2年目は、トラクタのロータリを改良して排水性を高めたり、移植機に高畝用のタイヤを使って九州仕様にしたり、メーカーと共同でアタッチメントを改良したりと、ハード面でも作業効率化の工夫を重ね、1年目の課題にスピーディに対応しました。協力農家に対しては、その地に合った肥料設計や土づくりの提案も行い、「任せられるFKKファーム」になるべく、信頼関係を築いています。また、適切な農場運営を実現するため、ASIA GAPの認証取得を目指しています。


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儲かる農業モデルを確立し地域活性化につなげたい

 2018年4月には、市と福岡九州クボタの共催で、タマネギの産地化に向けた取り組みを考える「たまねぎサミット」を開催し、市や県の注目を集めるなど、地域の人の関心も上昇中。こうした実績から、福岡県産米の輸出に向けた事業に、福岡九州クボタもメンバーとしての参加が決まりました。
 「新しい仕組みの構築や農地制限の問題、技術のレベルアップなど、課題はまだまだ多い。それでも儲かる農業モデルが確立すれば、雇用の場が広がり、地域活性化につながる。地域貢献のために頑張っていきたい」と、今後の展望を語る手嶌社長の言葉には、地元農業のサポートを使命とする、強い意志が感じられました。

クボタファーム探訪 バックナンバー
#01 兵庫県養父市 クボタeファームやぶ
#02 富山県高岡市 株式会社クボタファーム紅農友会

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