法人化する?しない?法人化を検討するときのポイントをプロが解説! お気に入りに追加
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渡辺喜代司税理士の なるほど!経営さぽーと#01

法人化する?しない?法人化を検討するときのポイントをプロが解説!

法人化する?しない?法人化を検討するときのポイントをプロが解説!

法人化したほうがいいのか、個人経営のままでいいのか・・・。「節税のため」や「家計と経営の分離のため」など、様々な理由が考えられますが、本当に考えるべきは『あなたの経営は次の世代に引き継ぐべき経営ですか?』ということ。法人化とは何か、渡辺喜代司税理士に解説いただきます。
(この記事は、平成26年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.29』を元に構成しています)

 


 

知っておきたい法人化

 皆さんにお聞きします。『あなたの経営は次の世代に引き継ぐべき経営ですか?』。これは法人化の相談を受けた時に、私が最初にする質問です。
 『法人化』とは、簡単に言うと法人という別の人格によって経営を行うことです。今まで経営していた個人は株主となり、その法人を支配します。
 人間そのものは、「死」を迎えることでその生涯を終え、経営もそこで終わります。このため経営を引き継ぐには、相続や事業承継を経て新たな人格(相続人や後継者)がその経営を引き継ぎます。しかし法人という人格は、「倒産」をしない限り、その経営は永久的に存続します。株主は「死」などにより入れ替わることはあっても、法人というロボットはつぶれない限り動き続けます。
 個人経営の永遠の課題と言ってもよい「法人化」。本来の目的は、節税も含め支出全般を抑えたいと思っているはずで、法人化の理由を『節税のため』と答える方は多くいます。
 しかし、実態は納税を過剰に意識するため他の支出項目は、支払うときになってから分かるということがあります。これらは法人化とは何をすることかということを理解していないことと税金への過剰反応から、このようなことが起こるのかもしれません。

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法人化する目的を明確にする

 最近は疑問があればすぐにインターネットを使って、情報収集することができますが、そこにはたくさんの情報が溢れています。
 その情報量はとても多く、何を選べば良いのか分からなくなります。私も「法人化」をキーワードに検索すると、行政団体、税理士、コンサルタント・・・と、情報提供されているホームページが検索結果として表示されます。その中身は「所有と経営の分離」「信用力向上」「人材確保」「節税」「融資枠増加」「有限責任」「地方税均等割税負担」「会計が煩雑」「社会保険の強制加入」などの同じような言葉が掲示されています。
 これらの情報はすべて真実ですが、果たして皆さんの経営にすべて該当するか否かは別問題です。よく聞く「法人化で節税」という言葉ですが、皆さんはそれほど多額の納税をしていますか?確かに税法の仕組みにより、専門家が知識を駆使して「節税」はできます。
 しかし、個人の確定申告と違い、法人の確定申告は、税理士などの専門家に依頼することになるため報酬が増額し、社会保険も強制加入することとなり、社会保険料も増額します。このため、節税だけで支出減額を図ることはできませんし、場合によっては法人化をすることで支出額が増加することもあるのです。つまり、支出抑制が目的でも他に経費が掛かるのでは、目的を達成できません。しかしながら、現在抱える問題を解決するために法人化を選択したならば、その法人化は意味を持ちます。

本当に法人化が必要かどうか

 また、「家計と経営の分離」はよく聞く課題です。確かに法人のお金を使って家庭の電気代を支払うわけにはいきません。しかし個人経営においても、家計と経営の分離はやり方次第で可能です。これは法人化をするために専門家の「殺し文句」でもあるのです。今までいくつものどんぶり勘定を法人にすることなく解決できました。  繰り返しになりますが、法人化をするために最も大切なものは、その経営を残すつもりがあるかどうかということです。後継者がいるとかいないという問題ではありません。最も重要なポイントは「残すべき経営なのか?」「後へ引き継ぐべきなのか?」ということです。いくら良い経営であっても誰も引き継がない、又は引き継げない経営であれば法人化にする意味はなくなります。『あなたは自分の経営をリモコンで操作し、そのリモコンを誰かに渡しますか?』。法人化が必要かどうかをこのように考えてみてはいかがですか。

 同じ法人化であっても、集落営農組織の場合は、法人化する意味が全く異なりますので次回解説します。

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