経営改善で意識すべきこととして納税があります。なぜならば儲かれば必ず避けられないのが納税です。しかしこの納税が資金繰りの良し悪しとなる大きなカギとなります。
(この記事は、平成30年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.36』を元に構成しています)
税金を納めることを納税と言いますが、私が農業者からよく耳にするのは「税金を取られる」という言葉です。この「取られる」と表現する人ほど、悪あがきとして「誤った節税」という行動をとります。なぜならば「取られたくない」からです。しかし現在の日本の税制において、儲かると必ず課税が生じます。反対に言うと、儲からないと課税は生じません。何とか儲けたいと考える人が多い一方で、納税を嫌うという事は儲かりたくないという結果になってしまうのです。
その「誤った節税」という行動は単純で、必要ではないものを買って経費にしようとすることです。具体的には取引先との接待を増やしたり、必要でないものまで買ったりするのですがこれらは本当に無駄遣いなのです。
経営を発展させ、維持しようと思えば必ず資金繰りに余裕のある経営を目指さなければなりません。例えば課税される税率が30%の経営が現時点で500万円の利益が出ていると、このままでは納税額が150万円になります。そこで納税を回避するために無駄に経費を500万円使ったとします。確かにこれで税金は「0円」になりますが、150万円の税金を無くすために使ったお金は500万円です。明らかに350万円は無駄な支払いになります。
ここで問題なのは、納税後に手元に残るのは70%相当であるにもかかわらず、30%の納税ばかり意識して、70%部分を増やそうと考えないことなのです。しかし納税後の資金を増やそうと思えば必要なのは「節約」なのです。利益に対して課税される所得税や法人税では節税という事は基本的には利益を減らさなければ税金は減りません。私はコンサルタントとしての立場から、支援する農業者の利益を減らすような指導はしません。また世間でよく言われる節税の多くは「経費の前倒し」や「利益の先送り」などが多いのが実態で、トータルで見た時は根本的に税金が減るのではありません。それゆえ「取られる」と感じている人たちには「節税」は殺し文句であり、その甘い言葉に必要でもない支出をしたり、不要な節税と言われる保険商品を買ったりします。税金を減らすためだけに不必要な支出をし、その支出が原因で資金繰りが悪くなると「本末転倒」です。
この様なことから最もお金が残るのが「節約」という事が分かります。大手企業が1円でも節約を唱える意味は、一番お金が手元に残る方法を理解しているからなのです。何でも節約しろと言っているのではなく、「経営者が普段乗る車は長年乗っているボロボロの車なのに、圃場を駆け巡るトラクタは最先端の経営ってカッコ良い!」と思うのは私だけでしょうか。