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底面の全部がコンクリート等で覆われた 農業用施設の農地法上の取扱いについて

底面の全部がコンクリート等で覆われた 農業用施設の農地法上の取扱いについて

最近の施設園芸では、耕土を使わず、培地としてロックウールやヤシ殻等を用い、培養液で水分や養分を供給する栽培方法が採用されることが多くなっています。このような栽培では、培養液を均一に広げるため、培地や高設棚を置く地面を水平に保つ必要がありますが、土の地面を凹凸がないように管理するのは非常に困難です。
(この記事は、平成30年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.36』を元に構成しています)

 


 

1.法律改正の背景

 最近の施設園芸では、耕土を使わず、培地としてロックウールやヤシ殻等を用い、培養液で水分や養分を供給する栽培方法が採用されることが多くなっています。このような栽培では、培養液を均一に広げるため、培地や高設棚を置く地面を水平に保つ必要がありますが、土の地面を凹凸がないように管理するのは非常に困難です。
 また、作業の効率化や軽労化を図るため、施設内に台車を導入することがありますが、このような場合には地面に傾斜や段差が生じないようにすることが必要です。最近では、収穫用のロボットの開発が進められていますが、精密な動作を実現するためにはロボットの走行する面の高度な水平性が求められます。さらに、ハウス内の温度や湿度等を厳密に制御することや衛生管理を徹底するためには、土壌の露出をなくすことが必要となっています。
 このようなことから、近年、底面を全面コンクリート張りとしたいという声が強くなっていますが、このような工事をする場合には農地法に基づく農地転用許可が必要で、そうなると税制上も農地ではなくなってしまうという問題がありました。このようなことを背景として、今般、国は、農地法を改正し、このような農地(法律では「〔農作物栽培高度化施設〕の用に供される農地」としています。)は、事前に農業委員会に届け出ることによりコンクリート張りしても引き続き農地として扱えるようにしました(農地法第43条)。これにより、税制上も農地として扱われ、固定資産税の 負担が増加する等の問題もなくなります。

2.改正の内容

 農地法は、優良農地の確保と農地の農業上の効率的な利用を図るために、農地の権利移動や農地転用を制限しています。ここでいう「農地」は「耕作の目的に供される土地」(農地法第2条第1項)と定義されており、「「耕作」とは、土地に労費を加え肥培管理を行って作物を栽培することをいう」(農地法関係事務に係る処理基準第1の(1)の①)とされています。農地をコンクリート張りにしてしまうとその土地の肥培管理は行われないため「農地」と言えなくなることから、農地法の転用許可が必要となっていました。今回の法律改正では、事前に農業委員会に届け出て、敷地をコンクリート張りにしたハウス等で養液栽培等により農作物を栽培する場合には、その農作物の栽培は土地の肥培管理を伴わないけれども「耕作」に該当するものとみなすこととしたもので、これによりその敷地は農地として扱われることとなりました。
 なお、このようなコンクリート張りした農業用ハウス等において農作物の栽培が行われていない場合には、農業委員会は農作物の栽培を行うべきことを勧告することができるとされています(農地法第44条)。

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3.改正法の施行日

 今回の農地法の改正は、「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」に盛り込まれ、国会で可決成立(4月4日衆議院本会議可決、5月11日参議院本会議可決)し、5月18日に公布されました。改正法の施行日は、公布の日から6月を超えない範囲内とされており、年内には施行される予定です。なお、今後定められる農林水産省令において、農業委員会への届出の手続きのほか、「農作物栽培高度化施設」が周辺の農地に係る営農条件に支障を生ずる恐れがないものであること等に関する基準(施設の高さや施設からの排水の処理等)が示されることとなっています。

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