日本農業の構造的変化にともなって、水稲中心の地域でも野菜作への取組が強化されるようになっています。今回は、消費者の同行を踏まえながら、安定的な生産のための栽培技術・機械化体系をご紹介いたします。
(この記事は、平成28年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.33』を元に構成しています)
消費者の需要動向
国は健康を維持するため、一日の摂取量を350g 以上として野菜の摂取を奨励してきましたが、現在までこの数値をクリアできていません(表1)。
また、国産野菜への消費者のこだわりは、同等価格から3割高を超える価格でも国産品を選ぶと答えた人が90%以上を占め、国産野菜への信頼は根強いものがあります(表2)
輸入に頼る加工・業務用
最近、増加している加工・業務用野菜は、その多くを輸入に頼っています(表3)。しかし、加工・業務用野菜も国産との声が高まる中で実需者を含めた関係者で新しい産地づくりが動き出しています。
例えば、実需者がロスの少ないむきたまねぎを海外に頼っていたものが、実需者自身が高額なたまねぎむき機を導入して、国内産地づくりを行い始めています。
これらの動きを受けて、現地では安定した生産を水田、畑地を選ばず、模索をしている状況です。現地では、機械化を伴う問題については機械メーカーの出番であり、クボタでも地域の方々と現地産地対応を進めているところです。
これらの現地実証を踏まえ、クボタでは、にんじん、ねぎ、たまねぎ、レタス、キャベツ、ほうれんそう、ブロッコリー、えだまめ等について水田への作付け及び畑作地帯での安定生産をハードとソフトで提案していきたいと思っております。
栽培技術と安定生産のための機械化提案
(1) 排水問題
水田利用のための野菜栽培はもちろんのこと畑地の野菜でも排水問題が大きな課題となってきました。特に今まで、排水性が良好といわれていた砂丘未熟土(砂地)での野菜栽培でも、排水性が悪くなっているという事例がでてきました。
例えば、新潟県新発田普及所管内の根深ねぎの産地で、排水性が悪いことが原因で病害が多発していました。そこで、耕盤破砕を実施して排水性の改善効果を実証し、大きな改善効果を得ることができました。
一方、水田輪作が農業経営の柱となっている九州、四国を中心とした西南暖地では、耕盤を割る必要があるのですが、水稲に戻す復田技術をセットで提案する必要があります。
また、干拓地のように地下水位が高く、耕盤を割ってしまうと地下水位が上がってきて、野菜の生育に障害を起こす事例もあります。このような場合は、耕盤を割らない方法でできるだけ高うねにすることが必要です。高うねにするためには、1条植えではなく、多条植えで大きなボリュームのうねを作ることが必要です。
(2) 効果的な土壌消毒
野菜作を不安定にしているのが連作障害で、その大半は土壌病害虫が原因といわれています。一連の作業のなかで土壌消毒剤を土壌に注入し、うね立て、マルチをして消毒後に土を動かさない技術が開発されました。
にんにく栽培に、うね成形・土壌消毒同時マルチ作業を導入した場合の経営効果が実証試験により確かめられています。
(3) うね内局所施肥
従来の施肥は、作物に吸収されない部分にも施用されていたため、効果やコスト面からも無駄が多くなりがちでした。そこでうね成形と同時に、作物の根圏のみ、局所に施肥する技術が開発されました。同時にGPS車速連動肥料散布機を使用すれば、車速が変化しても施肥量が一定に自動調整されるので、より高精度な施肥が行われます。
(4) 搬出
農業従事者の高齢化で重量野菜の積込み・搬出が困難な状況になっております。特に、水田利用の転換(輪換)畑では、あぜがあるのでより搬出の難しさが増します。
また、天候の状況が悪く、足場が悪い圃場では搬出時の機械作業が安定性を欠いております。そこで、クボタはパワクロに後方リフトを装着することで、重量野菜の搬出をより効率的にできるように提案しております。
ただし、搬出については、収穫・出荷を見据えて、収穫物を入れる容器をプラスチックコンテナ、フレコン、鉄コンにするかは収穫時期を含めて選定する必要があります。
おわりに
野菜については、特色ある産地、様々な野菜に合わせて多種多様な機械があり、その規模によっても機械を播種から収穫まで選択する必要があり、クボタはお客様のニーズに合った機械化提案をしてまいります。