過疎化が進む兵庫県の中山間地域で、地元農業者と東海近畿クボタがタッグを組み、設立した(農地所有適格法人)「クボタeファームやぶ」。その設立の経緯から、現在の取り組み内容、新しい農業モデル確立に向けた意気込みを取材しました。 (この記事は、平成29年9月発行のクボタふれあいクラブ情報誌「ふれあい」36号を元に構成しています。)
国家戦略特区に指定された養父市で、農業法人を設立
少子高齢化により農業の担い手が不足し、耕作放棄地が問題となっている兵庫県養父市。行政が意欲的にこの課題に取り組んできたことで、地域活性化への姿勢が国に認められ、養父市は2014年中山間地農業の改革拠点として国家戦略特別区域に指定されました。
東海近畿クボタでも、地元に貢献するために農業改革に協力する中、実証的な農場「クボタファーム」をここで展開して将来の後継者を育てようと、昨年農業法人を設立。地元の活性化に意欲を持つ農業者を代表に、「クボタeファームやぶ」を立ち上げ、地域雇用も生み出しました。
借り受けた農地で生産するのは、コメ、トマト、葉物野菜、とうもろこしなど。田んぼに直接種籾を播く「水稲鉄コーティング直播栽培」で省力化・低コストの稲作を行うとともに、トマトや葉物野菜を生産するための施設を設置。水稲については、作業を一括管理する「KSAS(クボタスマートアグリシステム)」も導入し、徐々に環境が整ってきました。
収益確保のために効率のよい複合農業を提案
もともと兵庫県はコメ主体の産地ですが、それだけで収益を確保するのは難しいのが現状。そこで同ファームでは、稲作とあわせてハウス栽培を行うことで、年間を通して収益の安定化をはかる複合経営を実践。
普通のトマトではなく、高い収益が見込める高付加価値のトマトを生産するために「アイメック栽培」を導入しました。特殊なフィルムを通して、最小限の潅水量で糖度を最大限に引き出します。手がける品種は、「フルティカ」と「小鈴」。
これらは見事、農産物の品評会「2017年野菜ソムリエサミット」で受賞を果たしました(「フルティカ」が金賞、「小鈴」が銀賞)。
現場を経験し、農家さまに寄り添うサービスへ
「トマトと毎日向き合った」と語るのは、「クボタeファームやぶ」のファームディレクター梶原理史さん。以前は東海近畿クボタの営業スタッフでした。
「今回、初めて農業を経験して、その難しさを思い知りました。ハウス内のエアコンの室外機が雪に埋もれて止まったり、トマトの受粉をする蜂の動きが鈍くなったりなど苦労もありました。葉の色が少し変わっただけで大騒ぎ。トマトの気持ちを考えながら試行錯誤する毎日です。農作業はハードですが、美味しいと言ってもらえるのは何よりの励み。それが実感できたことは、貴重な経験です。これからは、もっともっと農家さまに寄り添った提案ができると思います」と語ります。
次代の担い手に新しい営農を提案するために
取材に訪れた日は、地域の小学生を対象にトマトの収穫体験が実施されており、フルーツのように甘いトマトの味に、子どもたちが驚く声があちこちで上がっていました。同ファームでは、今後も農業体験や新しい担い手に向けた研修、行政と連携した地域活性化の活動を実施する予定。ゆくゆくはクボタの連携力を活かして、あちこちの農家さまと販路を結ぶ構想も描いているそうです。
「ファーム開設から1年半。これからも日々の作業を通して、さらなる効率化を模索したい」と意欲を見せる梶原さん。クボタファームの取り組みが、全国の農家さまの支援につながるよう、これからも精力的に試行錯誤を重ねていきます。