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大豆300Aレポート#14

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【大豆300AレポートNo.6(後編)】病害虫防除のポイントと生育について

【大豆300AレポートNo.6(後編)】病害虫防除のポイントと生育について

大豆の増収につながる病害虫防除のポイントと、大豆300Aに取り組まれてきた前田さんの圃場での大豆の生育状況について、クボタの松永亮一技術顧問がポイントを解説します。
動画はこちら

(この記事は、平成27年8月21日発行のクボタの営農ソリューション『大豆300AレポートNo.6』を元に構成しています)

 


 

病害虫発生予察情報を把握し、適期防除に努める

 鱗翅目のハスモンヨトウの幼虫は、脱皮しながら5齢でサナギになるまでの間、葉を食害します。ハスモンヨトウは5齢の老令幼虫になると食害量が飛躍的に増え、薬剤が効き難くなるため、できるだけ発生初期に防除することが大切です。雨の少ない乾燥年では幼虫の生存率が高くなり、大発生につながりやすくなりますので、要注意です。地域によっては、フェロモントラップに誘殺される雄成虫数に基づき防除時期を予察するなどの方法をとっていますが、高い防除効果を確実に得るためには、適期を逃さず、できるだけ早く防除を行うことが、ハスモンヨトウに限らず病害虫防除において非常に重要です。
 また、地域の病害虫防除所が発表する発生予察情報を的確に掴むとともに、実際の畑に行って発生状況を自分の目で見て確認することも重要です。防除は地域ごとの防除基準に基づき、適切な薬剤を選択して適切に行います。

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■開花期以降の病害虫

(茎葉害虫)
●全国的に発生し、葉を食害して収量を低下させます。特に春から降雨が少なく猛暑の年は多発します。

●お盆明けの小さな発生ピークに残効の長い脱皮阻害剤を散布し、その後の大きな発生ピークに速効性の高い剤を散布します。

(子実害虫)
●莢伸長後期から子実肥大期に、子実を吸汁して品質を低下します。カメムシは圃場周辺に多いため、栽培を集団化すれば一斉防除が可能です。

●周囲のヤブや草むらから侵入するので、圃場周辺の雑草防除を徹底することも予防につながります。従来からのピレスロイド系、有機リン系だけでなく、ネオニコチノイド系も使用が拡大しています。

(子実害虫)
●ほとんどの地域で発生します。幼虫が莢に産卵し、ふ化した幼虫が莢内部に入り込み、子実を直接加害します。幼虫が莢内に食入した後の防除は難しくなるため、適期防除が重要です。

●転作初年目の圃場では発生量が低く、連作すると発生量が増加します。

(紫斑病)
●全国で発生し、子実に紫色の斑点が発生して、商品価値を著しく低下させます。罹病種子や前年の被害株が伝染源になるので、種子は毎年100% 更新し、被害茎葉は圃場に残さないことが重要です。

●被害が大きい場合は、プラウ耕による天地返しや抵抗性品種の利用が必要です。種子処理剤で種子由来の伝染を予防し、結莢以降、特に莢伸長前期から1 ~ 2 回散布し、蔓延を防ぎます。

しっかりとした排水対策と早めのかん水が深い根張りを実現し乾燥害を防いだ

 今年富山県は雨が非常に少なく、乾燥していました。そのために草丈の伸びが抑えられる時期が長く続いたのですが、7月中旬に台風が近畿地方の近くを通過した時の雨で、草丈がぐっと伸びました。前田さんは排水対策もしっかりされておられ、圃場にかん水しても湿害の心配がありませんでした。そのため、根が土中深く伸びているために、下位葉が黄色くなり、落ちるまでに至るような乾燥害に遭うこともありませんでした。そのことが現在の立派な莢付きに結びついています。

目標とする収量が期待できるほどの良い出来栄え

 今の大豆の生育ステージは莢形成終期で、稲で言うと穂揃い期ぐらいです。稲では籾にあたりますが、莢という器ができてから、ようやく子実肥大が活発となります。今後、少し落莢が起こるので、今の莢数は確保できませんが、これから、大豆にとって最終的な収量を決定する子実肥大期を迎えます。その前に莢をしっかりと付けることが前提条件になりますので、それが出来ているということは、現時点では多収が期待できると予想しています。

万能散布バーで株間・株元の雑草をきれいに除草できた「狭畦播種」

 狭畦栽培は、いかに雑草を抑えるかがポイントです。前回、前田さんの狭畦栽培圃場を見たときに雑草が若干多くて、除草が大変だと感じました。今回使用した剤は、うね間・株間に登録が取れている非選択性の除草剤、バスタ液剤でしたが、万能散布バーを使って取りにくい株間・株元の雑草が予想以上に除草できています。ただし、非選択性の除草剤であっても、雑草の葉齢が進むと効果が劣り、雑草が残ります。今年は万能散布バーによる除草が初年目であったことから、適期よりやや遅れての散布となったため、若干の雑草が残りましたが、その効果は実感できました。また、莢付きについてですが、慣行よりも密植にしている分、個体当りの莢数は減りますが、それでも面積当りの莢数で言えば慣行並みの莢数は確保できています。

深層施肥の効果で莢数が増加した「深層施肥」

 事前耕うんで播種床をつくり、播種時には再度ドライブハローで耕うんし、成形盤で小うねをつくりながら、深層施肥と播種を行いました。今年のように播種時期が非常に乾燥した年では、このようなうね立て播種法では苗立ち期に乾燥害を受け易くなります。さらに、北陸地方のような重粘土壌ではドライブハローでは砕土が十分できていなかったことから、出芽しない個体や出芽しても生育の悪い個体があり、十分な苗立ちが確保できていませんでした。これまで、湿害対策に重点をおいたうね立て播種法を推奨してきましたが、今年のような乾燥年もありますので、今後の課題として残りました。
 一方、深層施肥の効果ですが、節間が詰まって主茎長がコンパクトに抑えられ、茎が太く、分枝の発達が非常に良いです。莢つきも非常に良かったので、その効果を確認することができました。ただ、苗立ちがやや不良となったため、どれだけ多収となるかは不明ですが、深層施肥の効果は、十分表れていると思います。

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