新潟県で水田約32haを管理する滝本さんは、除草剤や肥料の散布作業の体力的負担を軽減したいと、地域に先駆けてクボタの農業用ドローンを活用してきました。2024年には、コンパクトタイプのドローン「T10K」を導入。課題だった散布作業は、ドローンによってどう変化したのでしょうか。散布以外の活用法や、新型機を飛ばして実感した進化点についても伺いました。
歩いての散布は、毎回“体力勝負”だった
ドローン導入以前、滝本さんは背負い式の動力噴霧器で散布作業を行っていました。
「特に穂肥の散布は、真夏の暑さの中で20㎏ものタンクを背負い、柔らかい田んぼの中を歩き回るので、泥もかぶるし体力的にきつかったですね。足元も不安定で、稲を踏んで傷めることもありました」。
両親を含む6名のアルバイトとともに、少数精鋭で広大な農地を管理するなか、作業の省力化は常に大きな課題でした。そのような折に、新潟クボタから散布作業の軽労化につながるドローン導入の提案がありました。
「機械を導入する際に一番重視するのは、作業者の負担を極力減らせること」と話す滝本さんにとって、ドローンはまさにその思いに応える機械でした。すぐに新潟クボタが運営する教習施設で講習を受け、2017年に産業用マルチロータオペレータ技能認定証を取得。MG-1SAKを導入し、地域でいち早くドローンでの散布作業を始めました。
株式会社TAC 代表取締役 滝本 豊さん。水稲約32haの他に、大豆1.1ha、枝豆1.1haを栽培
散布も播種もドローン1台で。作業時間を大幅に短縮
滝本さんはドローンで作業をするようになってから「体力的な負担が減ったのはもちろんのこと、同じ時間で2~3倍の面積を散布できるようになった」と話します。
「以前は2haの穂肥散布に4~5時間もかかっていたのが、ドローンなら朝8時から正午までの4時間で、倍以上の5~6haを散布でき、一日でこなせる面積が劇的に広がりました」。
ドローンの活用により、穂肥の散布時間は約7割短縮され、作業効率と身体的な負担の両面が大きく改善されました。
さらに滝本さんは、ドローンの導入を機に鉄コーティング直播栽培でも活用を開始されています。
「もともと鉄コーティング直播用の湛水直播機で作業していましたが、作業しながら種が落ちているかを確認する必要がありました。ドローンは種が落ちる様子が目で確認できるところが安心です。作業時間も1haあたり約20分と、直播機に比べて大幅に短縮できました」。
T10Kのタンク容量は10㎏。散布幅(肥料)は4~10m(飛行高度2m)
安心感がさらにアップし、使い勝手も良くなった
滝本さんは、これまで使用してきたMG-1SAKから、更新のタイミングでT10Kに切り替えました。
「これより一回り大きいT25Kもありますが、移動のしやすさを重視し、軽トラへの積み込みもラクに行えるT10Kを選びました。T10Kでもバッテリ1本で1haは余裕で散布できます」。
MG-1SAKと比較し、滝本さんはT10Kについて、次の3点を高く評価しています。
●機体前方に配置されたFPVカメラ※で、作業時の安心感が向上
●カセット式のタンクで液剤交換が簡単になり、使い勝手が向上
●防水性の向上で、突然の雨にも安心して対応可能
※FPVカメラ:First Person View(ファースト・パーソン・ビュー)カメラ。
「これまでは、稲の葉が風になびく様子を頼りに散布状況を確認していましたが、カメラが2台搭載されたことで、より安心して作業できるようになりました。液晶モニタに映るドローン視点の映像を通して、狙った範囲内に散布できているかをリアルタイムに把握できるので、経験の浅い方も安心だと思います」。
また、液剤の補充が簡単になった点も評価します。「タンクがワンタッチで交換できるのは便利です。液剤がなくなったら、液剤タンクだけをすぐに取り外して補充できるので、作業がはかどります」。
さらに、防水性が上がったことも、ポイントが高いと言います。「飛行中に急な天候変化で雨が降ることもあるため、センサーへの影響が心配でした。そういう意味でも、防水性能が高まったのは非常にありがたいです」。
前後の正面方向の映像を、送信機の画面上にライブビューとして表示。滝本さんは、小回りを利かせたい場面が多いため、手動操作を選ぶことが多い
T10Kの総重量はバッテリを除いて13kgと軽く、軽トラにも積載できるコンパクトサイズ
カセット式タンクになったことで、薬剤やバッテリもワンタッチで交換
規模拡大に応えられるのはドローンがあるから
滝本さんがドローンを安心して使える理由に、新潟クボタの手厚いサポート体制があります。農業用ドローンは、指定整備事業所で年1回の定期点検を受ける必要があります。
「年に一度、定期点検をしっかりやってもらっているので、心強いです。免許の取得をはじめ、アフターメンテナンスまで、安心してドローンを飛ばせているのは、新潟クボタさんのおかげです」。
近隣農家の離農が進み、引き受けるほ場面積は年々増加していることから、滝本さんは今後ドローンの稼働頻度がさらに高まると見込んでいます。
「今は自分のほ場のみを対象に散布しているため、飛行日誌は紙に手書きしています。毎回書くのが大変なので、作業負担を軽くしたい思いがあります」。
将来的には、ドローンとKSASを連携させて飛行日誌の作成を自動化し、作成業務を効率化することも検討中です。
「まずはT10Kを有効活用することで、増え続ける面積に対応しながら、要所を押さえた効率的な散布を実現したいと考えています。安定した収量を目指すうえで、T10Kは私の挑戦に応えてくれる存在です」。
経営規模の拡大と収量の安定化という2つの課題に向き合う滝本さんにとって、T10Kはその両方を支える“右腕”として欠かせないものとなっています。
「今後、枝豆の葉面散布にもドローンを使ってみたい」と語る滝本さん。ドローン活用の構想は膨らむ




