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渡辺喜代司税理士のなるほど!経営さぽーと#06

〜決算書の見方(その3)〜

決算書の見方(その3)

経営にとって最も大事なのは資金繰りです。極論ですが「赤字なんて怖くない、だけど支払期限は絶対守れ!」これは、赤字になることより支払いを優先している例えです。支払いができている限り赤字になっただけでは会社は潰れないのですが黒字経営であっても支払いができなくなると倒産してしまうくらい資金繰りは重要なのです。今回はその支払能力の分析方法を解説します。
(この記事は、平成29年11月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.34』を元に構成しています)

運転資金は大丈夫?

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 図①にあるように100円の商品を150円で販売する取引があります。この取引では50円の利益が出ます。損益計算書で表すと図②のようになります。この損益計算書を見るとお金の動きに関する情報が一切ないことが分かります。このためこの取引にはいくつかの金銭のやり取りが考えられます。

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 まず、もっとも理想的な取引にすると図③のようにいわゆる後払いの「ツケ」で買った商品を現金販売すると手元にお金を持たずに取引を始めることができます。しかし図④のように現金販売がツケによる販売になってしまい、しかも商品仕入れの支払期限より後にツケを回収することになるとどうでしょう。支払いができなくなり、もしこれが手形取引なら「不渡り」になり倒産してしまいます。このような代金回収が遅れ支払いが間に合わなかった時の取引の損益計算書はどうなるかというと、実はこの場合も図②の損益計算書になるのです。売上金額も仕入金額も全く変わりません。ただ資金繰りだけが変わるのです。つまり利益が出る構造は同じなのにお金のやり取りひとつで倒産に追い込まれます。これが「黒字倒産」なのです。まさに「勘定あって銭足らず」です。

 このようなことにならないように常にお金の動きを意識した経営管理が必要となります。上記のことからも分かるように資金繰りを把握するためには損益計算書ではなく貸借対照表が必要となります。資金管理分析に「流動比率(算式①)」「当座比率(算式②)」があります。これは買掛金や借入金などで1年以内に支払うもの(流動負債)に対して1年以内に換金して支払いのできる資産(流動資産)を持っているかということを調べます。具体的には現預金のほかに売掛金や受取手形、棚卸資産などが流動資産に該当します。
 簡単に言えば財布の中に2万円が入っているときに実は2万円は他人から借りたお金ならば、お金を返してしまうと財布にお金は残りません。この状態が100%と表示されます。つまり100%を超えて自分のお金を持っていないとまたお金を借りなければ支払いができない状態になるのです。
 図⑤のように貸借対照表で流動負債が「100」で流動資産が「200」ならば流動比率は200%ということになります。これは1年以内に支払う金額の2倍のお金を持っていることになり、200%あれば理想といわれています。

 ではなぜ「流動比率」と「当座比率」があるのかというとこの二つの大きな違いは当座比率を計算するときの流動資産の中に含まれる現預金や売掛金など本当にすぐ支払いにできる当座資産だけを支払能力として計算します。この当座資産には棚卸資産を含まない点が農業経営の特徴に関連します。これは自分の持つ棚卸資産をすぐに支払うことができる資産で影響を受けます。例えば年末の棚卸資産がお米の場合、倉庫にある玄米を販売すれば換金できますが、年末の玉ねぎだと圃場に植わっている状態の葉だけの玉ねぎが棚卸資産となります。この状態で販売することは現実的ではありません。このため棚卸資産がどのようなものかで資金繰りが大きく影響することを理解する必要があります。例えば玉ねぎであれば翌年の初夏には製品となりますが、生産期間が3年にもなる和牛の生産になるとこのような訳にはいきません。つまり流動資産の多くを棚卸資産が占めるような経営の場合資金繰りに影響があるようでは生産計画や運転資金の確保を見直す必要があります。

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