1. HOME  >  
  2. 営農情報  >  
  3. 確かな栽培×新たな技術

われら元氣農業人

先進的な技術(大風量炭酸ガス施肥、底面給水育苗、蓄熱剤利用のクラウン加温、IPM導入等)を実証しながら効率的に経営拡大

〜確かな栽培×新たな技術〜

確かな栽培×新たな技術

大学で化学を学んだ後に就農された奥さん。薬剤の取扱いなど、学ばれた知識や経験は農業に活かせる部分が多いと話す。
(この記事は、平成30年6月発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.36』を元に構成しています)

 様々なフルーツの産地として知られる、和歌山県紀の川市。とりわけ打田地区は、いちごの産地として60年を超える歴史がある地区です。この地でいちごに取り組まれた先駆者であるお祖父様、そしてお父様に続く担い手である奥 佳樹さんは、就農以来、お父様から受け継いだ確かな栽培技術を礎に、新たな技術・機械を積極的に導入。様々な営農上の課題を速やかに解決することで効率化の推進や収量アップを実現し、産地の将来を見据えた経営に取り組まれています。

稲わら堆肥を活用した環境に優しい土づくり

 奥さんは、いちごの他に水稲を1.2ha栽培されており、土づくりには自家製の稲わら堆肥を活用されています。「1.2haの水田の稲わらから作った堆肥のうち半分は水田へ、残りの半分を土耕のいちごハウスに投入しています。畜産堆肥を使わず、稲わら堆肥を豊富に入れることで塩基バランスも良好に、さらに、もみがらもハウス内の通路に敷いており、水遣り後に足元が汚れないよう入れていますが、ゆっくりと土に還りながら土づくりにも寄与しています」とのこと。栽培の基本には、まず、環境にやさしい土づくりがあります。

より多くの年内出荷に向け先代から取り組む夜冷処理

 また、お父様の代から取り組まれているのが、夏の間にいちごの苗に冬を感じさせることで、花芽を誘導する栽培技術「夜冷処理」。年内出荷を増やし、収穫期を長くする目的で行われます。8月初旬から8月末まで、夕方5時から翌朝8時の間、15℃に温度管理した夜冷庫に苗を入れ、9月初旬に定植し、その後、また別の苗に夜冷処理を行います。夜冷処理は、苗の移動や温度管理等、非常に手間がかかるため、近年高齢化・担い手不足等により行われなくなっていますが、奥さんは「苗は全量、夜冷処理」に取り組まれています。

就農に際してハウスを連棟に作業の効率化を実現する

 14年程前、奥さんが就農に際してまず行ったのが単棟ハウスの連棟化。「父と今後を考え、まず2箇所の単棟ハウスを連棟化しました」。その後も順次進めていき、全てのハウスを連棟化されました。連棟化で大きく変わったのは作業性。「単棟ハウスは作業の出入りが多いですが、連棟になったことでトラクタ等の作業が一度で終えられる」。効率的に作業を進められるようになっただけでなく、ハウス周辺の道路に土を残すことも少なくなるなど、近隣への配慮もより確かなものになりました。

雨よけ底面給水技術やIPM防除育苗期〜収穫期の病虫害対策

 病虫害への対策にもしっかりと取り組まれており、育苗期、風雨やかん水の水滴で伝染の恐れがある「炭そ病」対策として、9年程前に育苗ハウスに「雨よけ底面給水技術※1」を導入。底面給水だけでなく風雨を防げる「雨よけ」とすることで、ほぼシャットアウトできるそうです。育苗期から収穫期を通して問題となる「ハダニ」への対策はIPM防除※2。「薬剤の掛けムラや風などでハダニが舞い込むこともあるので、ハダニの天敵であるチリカブリダニ、ミヤコカブリダニを放飼。天敵の力で化学防除を減らしつつ、予防効果を得ることができます。ハダニの繁殖を防ぐことで生育ムラを防ぐこともでき、収量の安定化にもつながっています」と奥さんは語ります。
※1 雨よけ底面給水技術: 底面給水による雨よけ高設ベンチ育苗。育苗中に頭上からのかん水が一切不要であるため、炭そ病等の発生を抑制でき、頭上かん水と同等の苗の生育、花芽分化、収量が得られる。
※2 IPM: Integrated Pest Management (総合的病害虫管理)

ダッチジェットの導入で一果重が増加し、収量もアップ

 3年程前には、CO2施肥機「ダッチジェット」を導入。CO2施肥機に関心を持つきっかけを振り返って「うちではさちのかと、和歌山県が育成したまりひめを栽培していますが、8年程前から栽培しているまりひめは、さちのかより実が大きく、秀品率も高い。開発から年月が経っているさちのかは、作業的にも収量的にも頭打ち感があったんです。CO2施肥機の導入で、さちのかが変わるかと思って」と語る奥さん。ダッチジェットを選ばれた理由は「ファンが強力なので、循環扇と併用しなくてもハウス内にまんべんなくCO2を届けられるから」。ダッチジェットの活用とともに、4段サーモの加温機で効率的に温度管理をすることで、活着が促進され、花の連続性も向上。導入後、3作目を迎えた現在の感想は「玉太りして、一果重が増えました。収量的にも2割ほど増えていると思います」。玉太りにより1パックあたりの粒数が減り、パック詰めの作業時間も短縮。ダッチジェットの導入は、品質の向上のみならず、出荷・調製の作業性向上にもつながっています。

地域の品種を活かした高設栽培の拡大も視野に

 現在、育苗ハウスも含め、2棟のハウスで高設栽培にも取り組む奥さん。高設栽培のハウスでは、クボタの蓄熱カプセル「エネバンク」も試験的に導入されており、「局部加温で入れていますが、省エネ効果もあると思います」とのこと。将来的な高設栽培の拡大も検討されていますが「高設栽培は作業性が良いというメリットがあります。しかし暖房費に加え電気代や液肥代など費用も増えてくるので、土耕栽培よりも1〜2割収量アップさせたいです。まりひめ等、地域の品種を活かしながら、収量を確保できるよう取り組んでいきたいと思います」と目下の課題をお話くださいました。

 今後については、人手の確保が大きな課題だそうですが、現状の栽培面積はしっかりと維持。地域を牽引する大規模経営体として、産地のこれからを見据えた新たな経営も視野に入れられています。

LINEで送る
ツイート
Facebookで記事をシェアする
このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページトップへ

menu

menu