1. HOME  >  
  2. 営農情報  >  
  3. 集落営農組織を法人化するなら、「農事組合法人」?それとも「株式会社」?集落営農の法人化をプロが解説!

渡辺喜代司税理士の なるほど!経営さぽーと#03

〜集落営農組織を法人化するなら、「農事組合法人」?それとも「株式会社」?集落営農の法人化をプロが解説!〜

集落営農組織を法人化するなら、「農事組合法人」?それとも「株式会社」?集落営農の法人化をプロが解説!

集落営農は、合意形成がとれたらすぐに法人化!と解説した前回。今回は、集落営農組織が法人化する際に、「農事組合法人」か「株式会社」か、どちらの形を選択するべきなのか、考え方のポイントを解説します。
(この記事は、平成27年発行のクボタの営農情報誌『U(ユー)元氣農業 No.31』を元に構成しています)

公務員は運営に参加できない!?「株式会社」

 集落営農組織が法人化するときほとんどの組織が「農事組合法人」か「株式会社」を選択します。私は相談を受けた時にいつも「株式会社になれますか?」と尋ねます。これは法人形態を悩む前にまず消去法で適性を確認するためです。
 まず労働対価について考えます。株式会社など会社法が適用される法人形態は農作業などの労働対価を『給料』として支払います。これに対して農事組合法人では給料として支払う方法だけではなく、利益の配当による『従事分量配当』として支払う方法も選択することができます。
 この二つの大きな違いは、給与は給与所得となる
のに対して、従事分量配当は給与所得ではなく農業(事業)所得となります。この違いはオペレータにとって大きな問題となります。

 もしオペレータが兼業禁止とされている職場で働く公務員などの場合、副収入が農業所得であれば、あらかじめ職場に農業をすることを届け出して許可を受けることで、法人運営に参加することが認められます。しかし源泉徴収票の発行される給与所得では副業が認められない場合があります。
 このため中心的なオペレータが公務員などの場合には、株式会社を選択すると法人の運営に参加できなくなります。それでなくても数少ないオペレータのうち1人でも参加できないことは集落営農組織にとっては影響が大きいです。このオペレータの参加を確保するためには、従事分量配当制を持つ農事組合法人を選択するしかありません。

「株式会社」では作業代を時間給払いすると役員分は損金算入できない

 もう一つは役員に対する労働対価の支払方法です。集落営農組織は家族経営とは異なり、他人が集まって組織されているために「平等」をモットーに運営しています。
 例えば草刈りをした場合、役員であろうと役員以外であろうと同じ時間単価で労賃を支払うことで「揉めないような運営」を心掛けています。
 しかしこれは役員に対して時間給払いをすることを意味します。法人税法では役員に対する報酬は、毎月同じ金額を支払う「定期同額給与」、予め支払金額や支払時期を決める「事前確定届出給与」など一定のルールに該当しないと損金算入できません。

 つまり役員への時間給払いは、いずれのルールにも該当しない「ルール違反」となって役員報酬を損金に算入することができません。このため全ての組合員に平等に支払いをしたい場合であっても給与制をとる株式会社では、時間給による支払いをした役員報酬は損金算入できません。
 もし仮に月給制を選んだとしても何の作業もない時期に役員だけに給与を支払うこととなり、他の構成員からの不満の原因にもなり、現実的に運用が難しいです。
 このルールは、「利益が出たら役員で山分けをして税金を減らそう」とする法人に利益調整をさせないためのルールなのです。理由はともあれルールに従わない場合は、たとえ利益調整ではない平等が理由であってもルールはルール、損金算入は認めてもらえません。

 このように運営するうえで最も気を使う人件費の支払方法で株式会社を選択できない組織があります。法人によっては兼務役員には時間給払いを導入しているところもありますが、組合長と監事は必ず上記ルールに従わなければなりません。
 法人化は一人でも多くの人が営農組織の運営に参加できるよう話し合いをすることが大切です。 また法人化はあくまでも組織の形態を変更するだけの手段でしかありません。継続的な運営には、収益性を確保することが必要です。

 次回は、経営を分析するための決算書の見方をご紹介します。


なるほど!経営サポート バックナンバー
#01 法人化する?しない?法人化を検討するときのポイントをプロが解説!
#02 集落営農は、合意形成が取れたらすぐに法人化!集落営農の法人化についてプロが解説!

LINEで送る
ツイート
Facebookで記事をシェアする
このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

ページトップへ

menu

menu